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映画館へ行こう その8 ワーキングマン

  • 2026-01-11
  • 2026-01-21
  • 映画
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初めに

明けましておめでとうございます。多くの人達にとっては、全くおめでたくないと思いますが、取り敢えず新年の挨拶を。気違いトランプによるベネズエラ侵略、都合よく発生するイランのデモ、地獄の高市政権の継続、森林火災、相次ぐ地震等等。新年早々、幸先悪いです。ベネズエラへの軍事攻撃は、過去にアメリカがイランの国王を追放したり、アフガニスタンの首相を暗殺したソ連と同じ手口です。歴史は繰り返す。それはそれとして、どんな時でも人生を楽しむ事や、学ぶ事を忘れてはなりません。

2026年1月某日。年始の連休中に、仲の良い友人達と映画ワーキングマン(原題A Working Man、2025年制作)を観に行きました。監督・脚本はデヴィッド・エアー。脚本にはシルヴェスター・スタローンの名前もあります。主演はジェイソン・ステイサム(以下ステイサム)。ステイサム以外の役者は、知らない人達が多かったです。私もまだまだ知らない事ばかり。

映画の前はいつも通り、仲間と一緒に食事をしながら会合。年末年始の暴飲暴食のせいで(主に飲酒が原因)体調が芳しくなく、そして年末は年越し蕎麦を食べなかったので、昼食は軽めに温かい蕎麦をいただきました。かつては年末の忙しい時期に、蕎麦で簡単に食事を済ませる習慣がありましたが、今は蕎麦を食べるのは大晦日にずれ込んでいます。事始め(正月の準備)は本来、12月中旬に行うものです。煤払いと同じ時期です。よって、年末に蕎麦を食すのは、大晦日に限定したものではありませんでした。

友人達と食事をしながら他愛もない事から、政治経済に関する事まで話に花を咲かせました。友人Aは高市早苗が何かしてくれると期待しているようで、非常に残念。「早苗」なんて立派な名前を授かったのに、日本の破壊者でしかありません。友人Aは元々、政治にそこまで興味も知識も無い人なので、簡単に騙されてしまうのでしょう。石破の方がまだましなのに・・・その高市はトランプから武器を購入し、さらに売り捌く気満々です。これはガザの虐殺に日本が加担するのと同義ですから。
この日は飲食店が満員で、店の手際の悪さもあって随分時間がかかってしまいましたが、何とか上映開始に間に合いました。年始はゆっくり休んでもいいのに、店を開けてくれているだけでも感謝でしょうか。私は映画が始まる前の、公開予定作品の宣伝を観るのをいつも楽しみにしていますが、この日観た宣伝は不快でした。映画コート・スティーリングの宣伝に「ばっちこい」とか変な日本語が出て来ましたが、日本人は何でそんな訳しか出来ないのだろう。もっと自然な訳にして欲しい。極めつけは公開予定のインド映画(題名を忘れた)の宣伝文句「俺は〇〇王になる」でした。ワンピース?もっと知性のある表現は出来ないものかと、常々思っています。

さて、暗い前置きになりましたが、映画の評価へ移ります。内容を知りたくない人は記事を読まないで下さい。記憶違いがあるかもしれませんが出来るだけ、覚えている限りの事を正確に伝えたいと思います。ビーキーパー(原題The Beekeeper、2024年制作)から丁度一年ぐらいになりますが、もう一年経過したのかと、時間の流れの速さを感じます・・・

粗筋

建設会社に勤める元英国特殊部隊員のレヴォン・ケイド(ジェイソン・ステイサム役)は、一見平穏な日々を送っていました。彼は現場監督の様な立場だと思います。仲間からは食事について気を遣われ、彼もまた仲間の安全を第一に考える人として、良い職場の雰囲気があるように見えます。上司の夫妻やその娘ジェニー・ガルシア(アリアンナ・リバス役)との関係も良好。ある日、レヴォンは仕事仲間の一人が、金の取り立てに来たちんぴら達に、暴力を振るわれているのを目撃します。躊躇無く、堂々と修羅場に介入した彼は、暴力を止めるように説得します。意に介さず悪党は尚も暴力を振るったので、レヴォンは軍隊仕込みの格闘で相手をぶちのめし、相手の武器もあっと言う間に無力化しました。そして隠していたショットガンを向けて牽制。悪党どもに、二度とここへは来ないように警告したのです。そんな彼の雄姿を見ていたジェニーは、レヴォンの強さの背景について興味津々な様子。彼女は祖父が軍人であり、「祖父から指の折り方や動物の追跡術を学んだ」とレヴォンに教えるなど、中々活発な若者である事が分かります。

その事件の後。レヴォンは(確か)週に一度の娘との面会で、娘を預けている義父の家に行きます。そこでせっかくの面会日なのに、義父がパーティーを開いているのを見て怒るレヴォン。娘と二人きりの時間を邪魔されたからです。その後、両者が娘の親権を巡って対立しているのが分かってきます。レヴォンの弁護士は、義父が娘に会えないように、色々と手を回している事を彼に伝えます。彼はお金を貯める為に車中泊で日々を過ごし、昼間は建設現場で真面目に働いていました。弁護士はレヴォンに家が無い(特定の住所が無い)のは不利である事を教え、戦争が原因でレヴォンがPTSDに罹っていると、義父が主張している事を伝えました。

ある晩、ジェニーは友人達と夜の街に繰り出し、店を梯子して夜を楽しんでいました。無邪気にはしゃぐ彼女達が最後に訪れたバーは、マフィアの息がかかった危険な店でした。そんな事を露知らず、悪酔いした友人を介抱するジェニー。手洗いから出た後、ジェニーは突然、妖しい男女に誘拐されてしまいます。その後、レヴォンは捜索願を出した両親から金を積まれ、娘を探すように懇願されます。父親のジョー・ガルシア(マイケル・ペーニャ役)は、自分の父がグリーンベレーだったので、レヴォンの様な男の強さが分かると言いました。レヴォンが素性を明かした事は無いと思いますが、ジョーは見抜いていたのでしょう。「もうあの頃の自分とは違う」と、一度は捜索の依頼を断ったレヴォン。しかし久しぶりに会いに行った戦友のガニー・レファティ(デヴィッド・ハーバー役)との会話で、自分の腹は決まっている事を見透かされてしまいます。迷いは束の間、レヴォンは誘拐事件の究明に向けて奔走を始めます。ジェニーの誘拐現場から足跡を辿り、容疑者達を割り出して監視し、次第に誘拐犯を追い詰めていくレヴォン。それがいつしか、ロシアンマフィアとの全面対決に発展していきます。

音楽・映像について

基本的に劇中で使われている音楽は、特にこれと言って特筆すべき事がありません。全体的に雰囲気音楽程度のものでしょう。しかし一つだけ。最後の戦いの前、囚われのジェニーが暗い部屋に監禁されている場面があります。照明が点けられず、光は窓から差し込む月光のみ。そして何故か置いてあるピアノ。そこは人身売買された人達や「買い手」が集まる娼館?の様な所です。そこで下種な変態野郎に引き合わせれる前、ジェニーは月光のソナタを弾きます。有名なベートーヴェンの曲ですね。極限の状況に於いてピアノを弾くジェニーの姿に、諦観とは違った落ち着きを感じました。救出に来たレヴォンの侵入に合わせて、このピアノ曲が映画用の編曲に替わります。話の雰囲気には合っていたと思いますが、悪党どもを葬送するには上等過ぎる曲です。私はクラシック音楽は滅多に聴かないですが、この曲やバッハのG線上のアリアはとても良い曲だと思います。因みに月光のソナタと言えば、ガイ・リッチーの傑作映画リボルバー(原題Revolver、2005年制作)でも使われていました。強烈な存在感を放つ始末屋ソーター(マーク・ストロング役)の鮮やかな仕事ぶりと、映像効果や話の展開と相まって、忘れられない印象を残しています。映画史に残る名場面と言っても過言ではなく、あちらの方が効果的な使われ方をしていました。そう言えば、あの映画でもステイサムが出演していました。

映像についても、特に目を見張るところは無いと思います。一つ気になったのが、最後の方で超巨大な満月が背景に映っていたところ。よくアニメやゲームである表現ですが、あれはCGIでしょうね。あれは不自然な感じが一杯出ていて、不要だと思いました。

役者について

この映画ではこれと言って凄い演技は無かったですが、演技と言うか相変わらずステイサムの体術の冴えが素晴らしい。向こうの役者達は、本当に体を張ってますね。役の為に軍隊で鍛えたり、逆に不健康なまでに体重を落としたり。若い頃のステイサムと比較すると、体が膨張したと言うか、大分筋肉が付いた印象があります。ステイサムはどこまでいってもステイサムで、役名が変わっても「ステイサムのまま」と言う印象は相変わらず。良くも悪くも、不変の役者です。

悪党の良い意味で小物っぽさ、切られ役に相応しい人間の小ささ、すぐに慌てふためいて逆上するのが良かったです(笑)。格好良い悪役もいいですが、救いようの無い悪役は、死んでも気にならないので。分かり易い勧善懲悪なアクション映画には、単純な悪役が相応しい。特にヴァイパー(エメット・J・スキャンラン役)アルテミス(イヴ・マウロ役)は、切られ役として良い悪党でした。人身売買を仕切っていたディミ(トリ)・コリスニク(マキシミリアン・オシンスキ役)や特注のスーツを身に付けた二人組(後述するシモンの息子達)は、ロシアンマフィアと言うよりも、素人の不良みたいでした。二人組は、ジャージ姿でコンビニエンスストアでたむろしてそうな、小物の不良と言う感じです。日本の場合だと、暴力団が大卒者を採用していると言う話があり、最早見た目ではその区別がつき辛く、堅気とその道の人間の境が曖昧になっているかもしれません。

悪役の中でもシモン・ハルチェンコ(アンドレイ・カミンスキー役)は殺された手下に哀悼の意を示したり、荒っぽいちんぴらとは異なった雰囲気を纏っていました。シモンは帽子を被り、綺麗な服に身を包み、黒の皮手袋を着用。一見紳士然とした彼は、ロシアンマフィアの中でも一線を画す存在でした。そんなシモンも息子達を殺され、レヴォンに辛酸を舐めさせられた後は、怒りに声を震わせ咆哮しました。彼の叫びで物語が終わりますが、この終わり方は続編が作られそうな雰囲気でした。

それからレヴォンの戦友、ガニー・レファティ(デヴィッド・ハーバー役)が良い味を出していたと思います。彼は戦争時の負傷が原因で弱視(多分盲目ではない)になったようで、「世界が灰色に見える」みたいな事を言っていたと思います。久しぶりに会いに来たレヴォンがジェニー誘拐の件を話すと、「許可を求めているのではなく、腹は括っているのだろう」と見透かしていました。彼は常にサングラスをかけ、何処か遠くを見つめる様な感じが、彼が背負った身体的な重荷を感じさせました。ガニーはレヴォンの娘のメリー(アイラ・ジー役)を預かるなど、面倒見が良いところも。最後は自分が所有する銃火器を「武器ソムリエ」として、レヴォンに貸してくれました。映画の冒頭で、ユニオンジャックの記章を付けた兵士達の姿が映し出されますが、彼らがレヴォンやガニーである事が分かります。その映像で、負傷した兵士の姿が目撃されますが、それがガニーなのでしょう。因みに、ステイサムは英国出身のようです。

話の展開について

ここでは映画の展開や、自分が思った事の諸々を話します。話の展開は、安心のステイサム映画と言ったところ。映画の題名が変わっただけで、中身はいつも同じ。それでも飽きずに観られる、時代劇の様な安定感があります。

〇ビーキーパーより頭脳派?

レヴォンは情報収集の為、時に力技を使う事がありますが、結構知力も働かせています。先ず最初に、レヴォンは最後にジェニーがいたバーを訪れます。そこでバーテンダーのジョニー(デヴィッド・ウィッツ役)の手元をよく観察して、彼が客と何か受け渡しをしているのを発見し、この店で怪しい商売がされているのを嗅ぎつけます。その後、暗い通路に落ちていたジェニーの遺失物を見つけるなど、警察の捜査手法の様な感じで、徐々に情報を集めていきます。脳まで筋肉で出来ている訳ではないのだ。ここでレヴォンが、通路の監視カメラを携帯電話で撮影していたのは、よく意味が分かりませんでした。どうでもいい話ですが、ジョニーがいたバーの棚には、白州が置いてありました。無類の酒好き、アルコール中毒の私は、映画で登場する酒にも、つい視線が誘導されてしまいます。映画の撮影ではたまに(よく?)、実在するバーがそのまま(店名もそのまま)使われる事があります。例えば、ルール 無法都市(原題Sinners and Saints、2010年制作)では、「boondock saint」と言う実在するアイリッシュパブが登場します。このパブは店内で処刑人(原題The Boondock Saints、1999年制作)を流しているそうです。ルール 無法地帯でショーン・パトリック・フラナリー(処刑人のお兄ちゃんの方)が出演しているので、それと関係があるのでしょう。

この後、ジョニーのアパート付近に車を停め、車内にカメラを設置して情報を収集する場面があります。ここではカメラを後部座席に設置し、さらに黒い布をかけています。外から隠し撮りをしているのを、分かり辛くする為でしょう。そして、手元の携帯電話を使って動画を確認しています。非常に頭が良い。一見すると、車内で携帯電話を弄っているだけの人に映るでしょう。そして彼は、気になった情報は素早く手帳に書き留めるなど、非常にまめである。

ウォロディミル・コリスニク(ジェイソン・フレミング役)の邸宅を監視する場面では、森の中に潜み、撮影機材に迷彩の網をかけて、目立たないように行動しています。監視される側の方向からは、薄暗い森に潜む彼は見えなかったでしょう。途中で出て来る彼の部屋は、敵の顔写真や収集した情報が壁一面に貼り付けられ、さながら捜査本部のよう。この様に、細部まで丁寧に描くのは非常に良い事ですね。この部屋を借りたのは、捜索の為の活動拠点が欲しかったのもあるでしょうが、弁護士に助言されたように、持ち家でなくても定まった住所が必要だったのも、理由の一つかもしれません。それから、レヴォンが車中泊をしていたのは、アメリカの不動産が高いのが理由かもしれません。アメリカ人は自分で家を(車検制度が無い車も)直しながら使うので、中古物件でも値崩れしないとか。直しながら使うので家の傷みが少なく、中古に対して悪い印象も無いのでしょう。アメリカではありませんが、私がカナダにいた時、少しの間ホームステイしていた時の事。そこで木製デッキのペンキ塗りを手伝った事があります。向こうの人達は日曜大工が好き、と言う印象があります。

〇複雑化する捜索

レヴォンが情報収集を進めて行く時、DEA(Drug Enforcement Administration)の捜査官であり、友人のトビアス・ギャレット(ウェイン・ゴードン役)に電話をかけて助言を求めます。彼は表向きには捜査情報を漏洩出来ない立場ですが、「ロシア人が薬物を捌いているバーで一杯やれ」みたいなさりげない助言をしてくれるのがにくい。そこなら有力な手掛かりが得られるかもしれないので、後は自分で何とかしろ。と言う意なのでしょう。トビアスは、冒頭のお洒落な映像に出て来たレヴォンの戦友の一人でしょうか?アメリカでは、軍隊出身者が法執行機関に再就職する事が珍しくありません。日本と違って、違法薬物が深刻な社会問題になっているアメリカでは「局」として麻薬を取り締まっています。DEAには海外派遣されるFAST(Foreign-deployed Advisory and Support Team)が存在し、軍隊の様な服装で軍隊の様な訓練をします。FASTはタリバンと交戦した事もあり、DEAは法執行機関の中でも軍隊色があるのが特徴です。もしトビアスに従軍歴があるなら、職場が変わっても戦場に身を置いているのは変わりないでしょう。

レヴォンは敵を捕まえ、一人また一人と情報を吐かせて消していきますが、途中でディミに取り入ったり(麻薬売買の持ちかけをした)、回りくどい手段を用います。DEAを頼ったり、犯罪組織に潜入する危険を冒したのは、この時点で追跡に必要な有力情報を、自力では集められなかった。と言う解釈でよろしいかと思います。レヴォンはトビアスの勧めで、バイク乗り達が集うバーでダッチ(チディ・アジュフォ役)と面会します。そこでダッチの周りに控えていた手下達をのして、同じ軍隊出身のダッチ(元空挺部隊)からすっかり信用を得ます。そして、ダッチから渡された麻薬を捌いた後で、ディミに引き合わされます。面白いのが、金を払って得た薬物(その金はジョニーの部屋にあったものと思われる)を投棄した上で、ダッチには「全て捌いた」と平然と嘘を吐いているところ。裏付けを取らず、簡単に信用するダッチはどうかと思います(笑)。その後、ディミから受け取った薬物もあっさり捨てていました。しかし敵はただの馬鹿ではない。ディミとの契約現場で既に怪しいと思われていたのでしょう。ダッチのバーの外でレヴォンが監視していましたが、アルテミスが監視カメラに映った彼に直ぐ気付いていました。

〇後半の展開について

お約束の展開として、レヴォンは一度は敵に捕まってしまいます。しかし頭脳よりも肉弾戦であっさり解決し、最終的に無事ジェニーを救出します。そこまでの展開は特に起伏が無く、敵の本拠地で大暴れするレヴォンの活躍が見られます。起伏が無いと言ってもそれはレヴォンだけで、他方面には色々な影響を与えていました。

レヴォンの義理の父は「お前はすぐに暴力に頼る。暴力の影が見えているお前には任せられない」みたいな感じで(うろ覚えなので適当)冷たい対応をされていましたが、愛する孫を預かる身としては、普通の反応でしょう。レヴォンの正体が割れてしまったのは、ディミの部下に自分の身分証明書を渡してしまったのが原因だと記憶しています。そのせいで義父の家にマフィアが侵入し、拘束された上で放火までされてしまいました。彼は「こうなったのはお前のせいだ」と救出に来たレヴォンに言いますが、責める様な口調ではなく、助けてくれた事に対しては礼を述べています。悪い人ではないのでしょう。

敵の99%はレヴォンが始末しますが、ジェニーにも活躍の場がありました。最後の娼館で前哨戦として、レヴォンがアルテミス・ヴァイパー二人組と対決します。その時、ジェニーがアルテミスの首を絞めて殺害しています。そこでレヴォンが「大丈夫か?」と気遣うのではなく、「よくやった」と淡々と反応するのが面白い。前述しましたが、ジェニーの祖父が軍隊経験者で「指折りや動物の追跡術を教えてもらった」とレヴォンに話をしていました。若しかしたら、組技とか制圧術等も訓練されていたかもしれません。薫陶の賜物かジェニーは一度、誘拐犯達から自力で逃げるのに成功し、最後にはアルテミスを締め技で斃しました。夜の森を疾駆するジェニーの姿が印象に残っています。
最後の戦いは、卑劣な犯罪者どもは皆殺しでした。しかし、マフィアに買収されていた警察官二人(レヴォンを昏倒させた者達)は、劇中で生き延びたと思われます。この悪徳警官二人も、きっちり粛清されると良かったです。

暴力表現、戦闘描写について

レヴォンはマフィアも真っ青な拷問で、情報を聞き出していきます。この辺は、ビーキーパーを踏襲しています。ジョニーは湯船に入れられ、顔に布を被せられた状態で水責め。ウォロディミルは椅子に縛り上げられ、脱出不可能な状態でプールへ落とされます。レヴォンは恐らく、情報を素直に吐いたとしても助ける気が無いであろう事が、雰囲気から察せられます。この非情さがとても良い。

前述した通り、レヴォンは一度敵に捕まってしまいます。汚職警官にショットガンのストックで頭を殴られ、護送車に乗せられたレヴォン。しかし、映画の主人公は銃を突きつけられても、昏倒させられても、すぐには殺されません。よくあるお約束で、完全に手足を縛っていないレヴォンの反撃に合い、変なスーツの二人組と運転手が死亡します。運転手が巻き添えで死ぬのもまたお約束。いつも思うのですが、護送車の後部で何か異変が起きたら、すぐ路肩に車を停めればいいのにと。何故か逆に、アクセルを踏み込んで自滅の道を辿ります。冷静に車を停めて、運転していた彼も戦闘に参加した方が、まだ勝機があっただろうに。ここは突っ込んではいけないところなのでしょう。そんなこんなで、戦闘は緊張感が無く、ビーキーパー同様に無敵のステイサムを味わえる内容です。銃の撃ち合いでも、敵の弾は全てレヴォンを避けて、逆にレヴォンが撃つ弾は次々と敵に吸い込まれて行きます。

最近のステイサム映画は容赦無く、過激で、残酷である事が多いですね。今回一番過激だったのが最後の決戦で、レヴォンがダッチの喉にナイフを突き立て、さらに掌底で押し込んだところ。命の取り合いなので容赦無い。でもこれは憎しみでやった事ではなく、武士の情けと言うのか、止めを刺す事の方が礼儀と言うのか。そんな感じがします。レヴォンは同じ軍隊出身の誼からか、最後は「済まない」と言葉を残し、ダッチの見開いた目をそっと手で閉じ、帽子を取って哀悼を示しました。そして娼館を去る前には、M14を捧げていました(借り物だけど)。ダッチの最期は悲惨だけれど、他には目を背ける様な残酷な描写は無かったと思います。

最近と言うか、前からかもしれませんが、除隊した男達が犯罪に手を染める映画が多い気がします。ザ・アウトロー(原題Den of Thieves、2018年制作)、キャッシュトラック(原題Wrath of Man、2021年制作)、ザ・コントラクター(原題The Contractor、2022年制作)など。アメリカでは学が無いとか、貧しい者達が軍隊へ行くと聞きます。どれだけ命を懸けて戦っても、負傷しても、その見返りは無く。軍隊を抜けてしまえば、まともに生活が出来ないのかもしれません。

銃火器と軍事的考察について

こちらでは、映画で登場した銃火器について語りたいと思います。レヴォンはハンドガン、ショットガン、ライフルと様々な武器を使用しています。一番最初に登場したのがレミントン870。最初の方で仕事仲間を助ける時、短銃身と簡易ストックを装備した、取り回しが良さそうなレミントンを水平に構えていました。あの様な構え方は映画的な表現です。「役者の顔がよく見えるようにするのが目的で、水平に構える表現が誕生した」みたいな話を何十年も前に聞いた事があります。この水平に構える表現は、映画の中ですっかり定着した感があります。

レヴォンが最終決戦に赴く前、ガニーが自分を武器ソムリエと称して色々出してくれました。AK(中国の56-1式)、M4、MP5SD6、M14等、色々な銃火器を紹介してくれましたが、レヴォンが選択したのはM14。最近映画でM14をあまり見ない気がするので、活躍が見られて良かったです。私の中では、M14と言えばジョニー・ストロング。有名なのがブラックホーク・ダウン(原題Black Hawk Down、2001年制作)のシュガートでしょうが、デイライツ・エンド(原題Daylight’s End、2016年制作)でもM14を見事に操っています。借り物のM14は、EBRみたいな現代的な改修をされた物ではなく、古い型をそのまま使っているのが逆に新鮮でした。これに迷彩塗装が施され、所謂ハイマウントでサーマルスコープが装着されています。あまりに高く取り付けられているため、レヴォンの顔の位置と視点が全く合っていないのが丸分かりでしたが、そこはご愛嬌でしょう。M14にもフルオート発射機能がありますが、さすがにセミオートで撃っていました。最後に戦ったマフィアの一人(クレジットではKarpと言う名)を、遮蔽物に隠れて銃身だけ出し、サーマルの映像が映し出された胸元の携帯電話を覗き、狙いを付けて仕留める場面があります。この様な物は実際に存在します。光学サイトと携帯電話が連動するのは、もはや珍しい技術ではありません。レヴォンはこれについて「ブルートゥースだ」と、ジェニーに説明しています。因みに、最近はサーマル市場を中国が席捲しているようですが・・・

Karpとその相方のNestor(禿頭の方)はそれぞれPKMAK-74を使っています。PKMは現代的な改修がされた物で、AK-74はGP-25(グレネードランチャー)が取り付けられています。ソ連(ロシア)の弾薬規格は西側と悉く違いますが、GP-25は30mm(AGS-30等で使用)ではなく、40mmの榴弾を使います。二人ともただ乱射するだけで、レヴォンにとって脅威でも何でもなく、あっという間に排除されていました。見た目の印象が強い二人でしたが、色物で終わってしまいました。この映画では、ビーキーパーのラザルス(テイラー・ジェームズ役)みたいな強敵が登場しなかったのが残念です。

レヴォンが娼館に突入する前、歩哨を始末するのに使っていたのがLive Free Armory Apollo 11と言うハンドガンです。これにサイレンサーと光学サイトを取り付けていました。表に出て来た客の男を右手の刃物で殺し、左手のハンドガンで武装した歩哨を撃つなど、実に華麗にきめてくれます。実戦で刃物を使う事は現代ではほぼ無いでしょうが、そこは映画的表現として許容出来る。と言うよりも、むしろ気持ち良いでしょう。このハンドガンは一見すると、キンバーが作るコルトM1911A1の系統みたいですが(キンバーのハンドガンも二種類この映画に出ている)、45口径ではなく9x19mm弾を使用します。Live Free Armoryの公式サイトを覗くと、色んな塗装を選べるようで興味深いです。映画で使われていたのはELITE BLACKと言う塗装の型でしょう。サイレンサー付き銃の「プシュッ」と言う安っぽい発射音は、ここ数十年であまり変わっていません。この映画でも、やはりその安っぽい音を出していました。サイレンサーの音を正確に表現していたのは、ゼロ・ダーク・サーティ(原題Zero Dark Thirty、2012年制作)ぐらいでしょうか?ビーキーパーと比較すると、主役のステイサムがM14の様な目立つライフルや、サイレンサー付きハンドガンみたいな映画栄えする物も使っていたのもあり、銃火器が有効に使われているような印象を受けました。

前述したガニー所有のAKもとい、金鍍金されたノリンコ製の56-1式自動歩槍は「フセインの宮殿からやってきた代物」と説明されていました。実際に、そのような事実(略奪や戦利品)があったのかもしれません。サダム(サッダーム)・フセインと言えば、FNハイパワーが有名でしょうね。世界で最初にダブルカラムマガジンを採用したハンドガンだったかな?フセインが空に向かって撃つ映像が記憶に残っています。最終的に銃弾は地上に落ちて来るので、あれはかなり危険な行為です。映画ではたまに派手な銃が登場しますが、大概悪役が使う事が多いですね。アルテミスが使っていたベレッタ421もかなり目を惹きました。

総評

この映画は、誘拐されたジェニーを救出するのが目的だったものの、レヴォン対マフィアの戦いの方に主眼を置いています。娘を誘拐された両親は、途中から殆ど出て来ませんでした。レヴォンが悪党に「お前には娘がいるか?」と問う場面がありますが、捕らえられたジェニーの心情や、娘が返って来るまでの間、気が気でなかったであろう家族の視点がもう少し描かれていれば、その言葉がもっと生きてきたかもしれません。人質救出の映画だと、隠れた名作プルーフ・オブ・ライフ(原題Proof of Life、2000年制作)が拉致被害者家族の心情を、一番細かく描いた映画かもしれません。ワーキングマンは、あくまでステイサムのアクションが売りの、分かり易い娯楽映画だと思います。

アクションが売りなものの、ビーキーパーのラザルスの様な強敵が登場しないのが、非常に残念でした。最後に強敵と戦って勝利する、と言うお約束の展開があった方が、締まりの良さや満足感があると思います。ダッチや他の名前が付いた悪役が、あまりにもあっさりと退場してしまいました。切られ役としては良かったものの、印象が薄くて毒にも薬にもならない悪役が多かった印象です。

私がたまに利用する劇場は、普段はがらんとしています。しかし、この日は珍しく観客が多かったです。いつもならきっと、席を半分も埋める事が出来ないでしょうに、ほぼ満席でした。きっと正月特番とかで、いつも観ているテレビ番組が無かったので、劇場に足を運ぶ人達が多かったのでしょう。正月に限らず、馬鹿なテレビ番組を観るぐらいなら、劇場で映画を観た方が遥かに有意義だと思います。ワーキングマンはやや大味なところがあるものの、休日の有効な使い方として、選択に加えても良いぐらいには面白い映画だったと思います。観ても損は無いでしょう。

最後に

最近、仕事にしても何にしてもやる気が出ず、記事を書くのに凄く時間がかかりました。特に連休明けは無気力になりがちですが、書かないといけない記事がどんどん溜まっているので、少しずつやる気を出して記事を増やしていきたいと思います。

と思っていたところ、そんな呆けた私の頭を、完全に吹き飛ばす様な報道がありました。立憲民主党原口一博が、中道政党を批判して立憲を離党。そして、れいわ新選組山本太郎さんが、療養の為に政界からの一時撤退を表明。解散選挙後の日本は、正に激動の時代に突入します。当然と言うか、NHKは全く報道せず。公共放送なのに、放送法を一切守っておらず、そして「自由民主党の手先」に落ちた連中に、期待するだけ無駄ですが。最初にも書きましたが、どんなに苦しくて狂った世の中でも、学ぶ事と人生を謳歌する事を忘れないで下さい。私の予想では遠くない未来で、人類の歴史は終焉を迎えます。それまで、各々悔いが無いように、日々一所懸命、全力で生き抜いて下さい。

記事公開 2026年1月21日

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