初めに
スピーカーの出力をORBのJADE Soleil、ヘッドホン出力を同じくORBのJADE-2LTDという二台持ちでやっていたので、集約を目指したいと常々思っていました。また、音質の向上も兼ねてアンプの買い替えをずっと考えていたので、SOULNOTE A-0の導入をしました。2022/7/29にオーディオ逸品館から購入、価格は98,010円でした。
半導体の供給不足の影響でしょう、当時は何処もかしこも在庫があらず11月納期の状態でした。駄目で元々、逸品館に納期を尋ねると近日入荷すると返答がありました。11月までとても待てず、辛抱たまらんと思っていたので即決でした。すぐに予約、二日後には届きました。逸品館の方には支払いや発送等を問い合わせたところ丁寧に回答をいただき、お世話になりました。
SOULNOTE A-0は2022/9/2に電子部品の価格高騰などを理由に価格が改定され、税込み121,000円から一気に143,000円に値上げされました。値上げ前に購入できたのは僥倖でした。
半導体を国内生産・供給にすれば価格維持以上に値下げも出来るでしょうに。NECや東芝にてこ入れすれば問題解決なのですが、そこに投資をしない日本政府は本当に無能です。
内容物、外観
CD再生機のC-1同様、梱包は丁寧にされています。黒と銀、どちらの色にしようか迷いましたが、比較をしたかったので銀色を選びました。CSRのホームページだと分かり辛いですが、天板は黒色です。付属品は説明書、スパイクと工具、電線のみ。リモコンは付属していませんが、私は不要だと思います。再生機同様、日本製です。
正面のでこぼこ部分は、C-1同様にヘアライン加工がしてあります。寸法はほぼ同じですが、A-0の方が奥行きが少しだけ長いです。C-1が余裕で入るラックなら、A-0も問題なく載せられるでしょう。
今回も専用ボードのSSB-1を一緒に購入しています。また、せっかくバランス接続を備えた機器ですので、同社のXLR電線のSBC-1(1.5m)も買いました。設計の加藤氏がfacebookで「ぶっ飛びますよ!」と言っているので、C-1との親和性も期待しての購入です。
SBC-1の外箱は質素な感じ。必要最低限の梱包ですが、これで充分だと思います。これも日本製です。
操作、機能面
電源の接続端子は着圧がしっかりしています。ここはORBより良いと思います。下記に前面の表示画像を載せておきます。①電源スイッチ、②プリアウトスイッチ、③インプットセレクタースイッチ、④音量調節摘まみ、⑤ゲインロースイッチ、⑥ヘッドホン出力端子の順に番号を振っています。
①電源スイッチは押した時の感触がC-1とほぼ同じで、かちっとした手応えがあって好印象。C-1と違って表示灯があまり目立たないので(C-1は右側に曲番号と時間がはっきり表示される)、電源を落とすのをたまに忘れたりします。
説明書はぞんざいなので補足。③インプットセレクターは1~4まであり、1と2がXLR入力、3と4がRCA入力となっています。セレクターの摘みの動きは結構硬め。
④音量の摘みはORBのぬるっとした動きと違って、1クリックずつカチカチとしっかりした感じで小刻みに動きます。これはこれで操作が気持ち良いです。
C-1、A-0ともに右側の放熱口の方が若干熱くなります。熱くなると言っても、壊れるかと心配するほど熱を持ったりはしません。夏場に使用して、ちょっと熱いかな程度です。
欠点、と言っていいのでしょうか。スパイクを取り付けた状態の三つ足は安定感が無いので、電線の付け外しなど動かした際に「がったん!」と大きく動くことがあります。ちょっと驚きます。先端が潰れないか心配。これはC-1も同様です。設計の加藤氏もスパイクは評判が悪いので、スパイクを使わないでも高音質を引き出せたらと考えているようです。専用ボードの使い方などについて色々語っているので、気になる人はfacebookを見ると良いでしょう。
SOULNOTEの製品は慣らしが済んだ状態で出荷されている事は前回学習しましたが、改めて説明書をしっかり読むと、使用するに従ってより性能を発揮するとあります。やはり自宅での慣らしも必要なようですね。今回初めてバランス接続を使うことになりましたが、XLR端子は螺子回しが必要なく、装着が楽な上に着圧もしっかりしているので快適です。
付属の電源電線の接続について説明書に記載がありますが、丸い刻印がある方が接地用です。コンセントの穴の長い方が、刻印のある爪が刺さる向きになります。説明書は困ったときに読む物、とする人が多いと思いますが、こういうのは見落としがちですね。
音質、性能面
公式より下記に諸元表を載せておきます。
出力 | スピーカー:10W×2(8Ω), ヘッドホン:3.0W×2(32Ω), プリアウト:2.0V(10kΩ) |
全高調波歪率 | スピーカー:0.2%(10Hz〜100kHz 3.3W 8Ω), ヘッドホン:0.03%(10Hz〜100kHz 200mW 32Ω), プリアウト:0.005%(10Hz〜100kHz 2V 10kΩ) |
周波数特性 | スピーカー(8Ω 1W):5Hz〜350kHz(+0/-1dB) , ヘッドホン(32Ω 200mW):5Hz〜400kHz(+0/-1dB) , プリアウト(10k Ω2V):5Hz〜400kHz(+0/-1dB) |
入力感度/インピーダンス | LINE1,2:0.775V/10kΩ(H), 4.0V/50kΩ(L), LINE3,4:0.775V/5kΩ(H), 4.0V/25kΩ(L) |
トータルゲイン | H:22dB, L:8dB |
S/N 比 | 115dB(IHF Aネットワーク) |
電源電圧 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 31W(C-1と同じ) 21W(アイドリング時) |
最大外形寸法 | 本体: 430(W)×109(H)×418(D)mm (スパイク装着時) |
質量 | 8.0kg |
付属品 | スパイク、電源ケーブル |
ここから先は音の評価になります。かなり泥沼に嵌まった感想になります。
導入初日の2022/7/29。まずはヘッドホン(FOSTEX TH900mk2)を使って、スパイク無し、ボード無しの音を試してみました。視聴に使ったCDはOpethのHeritage。同時購入したSOULNOTEのXLR電線と、ORBのakihabara(RCA)の両方を接続して視聴。1曲目のHeritageは、ピアノとベースしか使わない地味な楽曲。ベース音が深く豊かに聞こえるのが印象的でした。
2曲目、Devil`s Orchardは、グロール(デス声)離れした新時代のアルバムの中でも屈指の名曲の一つ。ここで気付いたのはORBのアンプより音が遠く、迫力が減退したような感じがしました。同じRCA接続でも、ORBのJADE2の方が音が良いと感じました。そこでセレクターを操作してバランスに変えると、明らかに音が変化。音圧、音量が増したものの、音割れが出始めました。音割れの原因は設置環境ではないだろうと思いつつも、中断。すぐに設置をし直し、専用ボードでスパイク受けしました。専用ボードを使う際は、スパイク受けのインシュレーターは凸型設置の方が音が良いと思います。ちなみに、設計の加藤氏によると、専用ボードを使わずスパイクをラックに直刺しが一番良いそうです。
バランス接続で再度聴き直すものの、結果は同じ。歌声は籠ったような感じで、音飛びのような錯覚があったり、やはりどこかで音割れも生じました。1曲目のHeritageでは鍵盤を一際強く叩く部分で「ぶちぶちっ」という感じのグリッチ音のようなものが頻繁に入りました。2曲目ではギターの音がぼわーんとしたり音が割れたり・・・
説明書を読み、一度電源を落として音量の摘みを下げて再接続しても変化無し。3曲目のI Feel The Darkではあまり音割れが確認されませんでした。音割れは全編に渡ってではなく、特定の音だけがそうなっている様子でした。録音状況も関係しているかもしれません。さらに聴き続けると、Haxprogessでさざ波の様に拍手が起こっているのに初めて気付きました。本当はこれまでも聞こえていたかもしれないけれど、真剣に音質を見極めようと集中しているのが理由かもしれません。
2022/7/30。一旦ヘッドホンを離れてスピーカー(DALI Menuet SE)で聴いてみることにしました。ヘッドホンであった雑音は確認されず。音量の摘みを12時くらいにして聴き始めましたが、少しうるさいので11時くらいに後退しました。音量に関しては、同じ位置でも明らかにORBより元気があります。Devil`s Orchardは歌声の残響が良く、ドラムの疾走感が心地良いです。ベース音は徐々に終息していく音の過程が良く分かります。最後の見せ場であるギターソロでは高音が良く出ています。ここまで綺麗に高音を鳴らす機器にはお目にかかったことが無いです(と言ってもこれでアンプはまだ3台目)。続けてdEUSの傑作アルバムworst case scenarioを聴きましたが、ネットの聴き比べの批評でも言われていますが、生演奏のような臨場感がありました。このアルバムはジャズっぽい雰囲気があるせいかもしれません。
もう一度ヘッドホンで聴き直してみようとして、一つ気付きました。ヘッドホンの端子が思ったよりかなり深くまで挿入出来ることです。差し込んでいくと最後に少しばかり抵抗があって、そこを抜けるとずくっと入ります。音割れの正体は接続不良だった・・・で済めば良かったのですが、結局違いました。
久しぶりにOpethのSorceressを引っ張り出してきましたが、全体的に音割れが酷い!特に2枚目のライブ音源が酷い。しかし、同バンドのアルバムPale Communionの場合は殆ど音割れしていないので、頭に沢山?が浮かびました。音割れが酷いものの一つ良い点がありまして、Devil`s Orchardの最期の方、ギターソロが終わり「God is dead」と囁くように歌って終息していきますが、動から静に変わる瞬間(その逆も然り)の音の切り替わり、音の移行の良さに凄く感動しました。
2022/7/31。Pale Communionをスピーカーに切り替えて聴きました。Moon Above Sun Belowの手数の多いドラムや、中盤の怒涛のギターソロの速度にしっかりついてこれています。音の分離良好、音圧・音量も申し分無し。少しだけ歌声が前に出過ぎて、うるさい感じはありました。ギターソロが終わって静寂に移る瞬間は、少し鳥肌が立ちました。
2022/8/1。ヘッドホン出力の音割れについて、自分一人で考えていても埒が明かないのでCSRに問い合わせしました。直面している問題点と自分の使用環境を伝え、回答を待ちました。返事はとても早く貰えました。分かった事は、
①ゲインロースイッチは切り替える事により増幅信号を14dB下げる働きがあり、ヘッドホン出力にも有効。
②XLR電線を変えても、音割れは改善しないと思われる。
③音割れの原因は音源に因る。
私の予想と大体合っていましたが、この回答を見る限り、解決策はなさそうに思えました。試しにゲインロースイッチを入れて聴きましたが、確かに音割れは消えるものの、音の迫力も解像度も減退するだけで、何の解決にもなりませんでした。②については、比較するために後日購入したORBのJ10-XLR CLEAR FORCE 1.0に替えても当然効果無し。
ところで、SOULNOTEのSBC-1は電線部分が硬質な針金のような感じで、曲げ癖が付き易いです。ホット・コールド・グランドそれぞれが被覆で覆われておらず、ばらばらに伸びており少しもじゃかるので取り回しは良くありません。ORBのXLRとの音質比較は目下継続中ですので、違いが判明したら追記したいと思います。音割れの件でCSRの方には丁寧・迅速な対応で疑問に答えていただき、ありがとうございました。
音割れ対策が全く思いつかなかったので、早々に見切りをつけることにしました。バランス接続の時に音割れするのに、アンバランス接続では問題なく音が出ている理由が皆目見当つきません。もしかしたら抵抗値の高いヘッドホン、例えばゼンハイザー製品なら音割れが無くなるかもしれませんが、それでは大金を払ってTH900を購入した意味が無くなるので、ヘッドホンで聴く時はJADE2を使い、スピーカーで音を出す時はA-0を使うというように妥協する事で決着しました。加えて、ヘッドホンをRCA接続で聴く分にはJADE2の方が音質が高いと結論を出しました。A-0のヘッドホン端子はあくまでおまけなのだと、現時点では納得しておくことにしました。今後、音割れの解決策が見つかったら追記します。JADE2も結構値が張る物ですし、ORB製品はやはり質が高いのだと思います。手放さずに壊れるまで愛用したいと思います。
2022/8/6。再度スピーカーでRCAとXLRを聴き比べ。試聴したのは待望のポーキュパイン・ツリー新譜CLOSURE / CONTINUATION(当然Deluxe仕様)。比較するとRCAは音が緩く、何か遠慮して楽器を弾いているような弱々しさがあり、各楽器の一音一音の圧や解像度などはXLRの方が上だと思います。RCAで聴くとJADE Solieilとさほど音質が変わらない感じなので、バランス接続で良いだろうと思います。消費電力で言えばJADE Soleilの方が高いはずなのに、A-0の方が明らかに余裕をもって駆動しているのが分かります。
最後に
これまで使用して判明した事を総括しますと、
①SOULNOTEはやや硬質でぴしっとした音が出る傾向にある。メタル系音楽との相性は良いと思うが、ジャズやクラシックのような(私は全く聴かないが)比較的静かな音楽でも良い音を出せる。特にそのような音楽では生演奏のような艶や臨場感があり、様々な種類の音楽を鳴らせる万能感がある。苦手とする音はないであろう。
②スピーカーを鳴らす時は明らかにバランス接続が良い。
③かなりの余力を持って駆動しており、音量がやや小さめでも満足のいく音を出してくれるだろう。
④原音忠実で余計な味付けが無く、解像度、音の分離、音圧、表現力など全般的に申し分ない性能を発揮してくれる。
⑤確実に値段に見合った、またはそれ以上の性能を保障出来る。
あくまで個人的見解です。なにぶん浅学な上に頭が完全に文系なので、専門的な(理論的な)事について偉そうに講釈することは出来ませんが・・・少しでも参考になれば幸いです。
恐らく、高額な音響製品を購入するのはしばらく無いと思います。電線やコンセントなどは替えるかもしれませんが。自分の理想とする環境が整ったので、壊れるまで愛用したいと思います。
世界が不穏な気配で包まれている現在、音楽というささやかな楽しみさえ物価高騰の煽りを受けて、お金がかかって負担となります。でも、出来れば多くの人達にダウンロードする音楽などではなく、レコードやCDといった手に取る事が出来る媒体で、真に音楽を楽しんで欲しいと思います。音源の真価を発揮するため予算の許す限り、拘りを持って作られた国産製品に手を伸ばしてみてはどうでしょうか。