初めに
私はこれまで音楽を聴く際はヘッドホン一筋でした。何故なら、ヘッドホンは外部の騒音や生活音を遮断することで静寂を確保し、真に音源と向き合えます。そしてヘッドホンの音漏れ程度であれば、近隣住民への迷惑もありません(アパートではないので)。深夜・早朝を問わず音楽を楽しむ事が出来ます。
それでも「スピーカーが音を満たす空間」に身を置くというのは、音楽好きにとって何か惹き付けるものがあるのは事実。食わず嫌いをしない性分としては、一度は試してみようと常々思っていました。ヘッドホンが外界との接続を遮断して音楽に没頭できる媒体であるのならば、スピーカーは音楽のある豊かな空間を創造して楽しむものだと思っています。ただ酒を飲むなら家飲みでもいいのですが、わざわざ高い金を払ってバーに行くことに似ているかもしれません。音響に凝り始めてから十年近く経った今、ようやく新たな世界への扉を開きました。

自分の経済事情と照らし合わせて、手が届く中で一番良さそうだったのがDALIのMENUET SEでした。2021年8月にフジヤエービックで188,100円で購入しました。丁度、原材料費の高騰などの理由で1~2万円ほど値上がりした時期で、もっと早く買っておけばと後悔しました。
内容物、外観
梱包は必要最低限で、外箱などに特別凝ったものや高級感などはありません。本体以外は説明書等が付属しているだけです。



ターミナルは旗艦商品であるEPICONと同じ物をあてがっているようです。通常のMENUETは銘板がシールのようですが、SEは真鍮製となっています。金色に輝き高級感がありますが、この銘板はシールか何かで留められているだけなので、螺子止めだと更に良かったと思います。銘版の左肩にはMade In Denmarkの文字が確認できます。検査をした人のイニシャルでしょうか、HBという文字の記載があります。因みに、久しぶりに記事を見直して、本体の画像は撮り直して差し替えました。より見易くなったと思います。




本体の外観は個体差があるかもしれませんが、ネット上の画像と比較すると暗い色合いに見えます。ハイグロスの仕上げがたいへん美しいですね。木目の美しさと鏡面処理がとても目を引きます。こちらで掲載している写真は少し肉眼より明るく映っていますが、概ね現物の色や表情を再現出来ていると思います。ところで、本体に埃が付きやすいのがとても気になりました。静電気を帯びやすいのか、全周によく埃が付着します。付属の手入れ用布を使うと綺麗に拭き取れるので、たまに掃除してあげましょう。
使用環境
これを購入した時点での使用環境については以前書いた「Fostexの記事」と大きく変わりないですが、前回触れなかった事などを少し載せておきます。私の住んでいる家は築四十年以上で、伝統的な日本家屋だと思います。私室の広さは六畳で壁は今どき塗り壁。床はずいぶん前ですが床板が張り替えられ、硬く堅牢な構造です。軋んだりしません。周りには棚やベッドなどが置いてあります。壁側の中心に音響用のラックを設置しております。
プリメインアンプはORBのJADE Soleilを使っています(2026年現在はSOULNOTE A-0)。これは一つ前の型になります。新品が安売りしていた事と、真空管アンプに興味があったので何となく買った物で、長らく使用しないまま置物と化していました。同社のJADE-2 LTDのヘッドホンアンプと比較して(価格差もありますが)性能が数段落ちるので出番がありませんでした。音量の摘まみはこの色だけ、真鍮が使われています。新品の内は金色で綺麗ですが、経年で色がくすんできます。本体色はMidnight Purpleが示す取り、深い夜を思わせるような綺麗だけれど落ち着いた安らぎを覚える色となっています。これとCD再生機をRCA-AKIHABARAで繋ぎ、スピーカーをINNOVA TS7(バナナプラグ)で繋いでいます。どちらも同じORBの製品です。


私の知る限りORBは全て日本製で、どの製品もたいへん丁寧に作られています。画像からは伝わり辛いかもしれませんが、AKIHABARAのプラグは宝飾用の銀メッキが施されています。普通の銀色ではなく少し黒みがかった色で、とても綺麗で高級感があります。以前はOYAIDEのACROSS750を使っていましたが、これに変えた後はっきりと音質向上を実感できました。音量の摘まみが同じ位置でも、伝わって来る音の圧力が明らかに大きく、解像度も向上しました。またACROSS750の電線は硬くて取り回しが悪いのに対し、これは線が細く柔らかいのでとても扱いやすいです。買って良かったと思います。この記事を書いている時点で終売していますが、どこかで新品在庫が残っていたら興味のある方は購入してはどうでしょうか。



音質、性能面
肝心な音の性能ですが、まず最初に公式からの諸元表を以下に載せておきます。
| 希望小売価格(税込) | ¥220,000(ペア税込) |
| カラー | ワイルド・ウォルナット・ハイグロスフィニッシュ |
| 周波数特性(±3dB) | 59~25kHz |
| 感度(2.83V/1m) | 86dB |
| インピーダンス | 4Ω |
| 推奨アンプ出力 | 20~100W |
| クロスオーバー周波数 | 3,000Hz(2WAY) |
| ツィーター | 28mm ソフトドーム |
| ミッドレンジ/ウーハー | 115mmローロス・ウッド・ファイバーコーン |
| エンクロージャー・タイプ | バスレフ型 |
| ターミナル | シングル |
| 外径寸法 | 250mm x 150mm x 230mm |
| 本体重量 | 4kg |
| 付属品 | グリル、ラバーフット |
最初はインシュレーターを使わず、ラックの上に直に置いて試験してみました。歯切れが良く、音の輪郭がはっきり(高解像度)しているように聴こえました。女性の歌声には艶が乗っています。低音は音量があって豊富に出て来ますが、ぼわぼわとした音鳴りがしました。低音の量感がある分、高音は不足していると思いました。量感の不足と伸び悩みがあり、綺麗で澄んだ音は出ていないように思えました。このスピーカーに限らず、低音・中音域の音が良くても、高音がしっかり出ない機材は多いように感じます。また、音の分離はあまり良くないと感じました。一つ一つの音の再現は良いものの、それが少しごちゃごちゃしていると言いますか、秩序が不足しています。
一月半ほど様子を見てから、インシュレーターを調達することにしました。まずは安価で定番なところからOYAIDEのINS-SPとINS-USを購入。スピーカー正面から見ると▼の3点支持で配置しました。そうしたら低音のぼわぼわとした感じが鳴りを潜め、高音の音質が向上したように思えました。よーく聴いてみると違いが分かりました。二割り増しぐらいに音が良くなったと思います。違いはシンバルの音で気付きました。「しゃりしゃり、ちっちっ、しゃん」という叩き方による音の違いが明確になり、金属の質感がよく伝わって来るなど、解像度が上がったと思います。高音の量が増したと言うより、無駄な低音が抑えられ、結果として高音が少し前に出て来たのではないかと予想しています。インシュレーターが金属製なので、高音が硬くなったのかもしれません。何にせよ、高音域の質が上がったので僥倖です。音量の摘まみは12時か1時くらいが限界で(近所迷惑になるので)、出来ればもっと大きい音で聴いてみたいですが。摘まみを上げていっても、綺麗な音出しが出来ています。


その後、インシュレーターはOYAIDEの別の商品に交換しました。INS-BSとINS-BDを組み合わせて使っています。そして、これで最終的に落ち着いています。INS-BSは本体が高純度真鍮製で、底面がカーボンFRP素材です。大きさからは想像出来ない程ずっしりと重く、金属とカーボンの表面処理・表情がとても美しい製品です。これを土台としてINS-BDを載せて使っています。INS-BDはブラックダイヤモンド(ヘマタイト)素材で、公式の説明によると国内の宝飾工房で天然石を高精度に切削。宝石加工職人の手で一つ一つ丹念に鏡面研磨を施してあるそうです。正直なところ、INS-SPとINS-USの組み合わせと比較して、特別大きな音の変化は無かったと思います。個人的にこう言う物は自己満足ですが、見た目も重視しているので私は気に入って使っています。

私がここ二年ほど主に聴いているのは、ポーキュパイン・ツリー(Porcupine Tree)とスティーヴン・ウィルソン(Steven Wilson)の個人名義の音楽です。彼の音楽はとにかく幅が広く色んな要素があるので、様々な音を聴き比べるのに最適かと思います。この世で、彼以上の音楽を作れる者は存在しないでしょう。私はそう信じています。ちなみにピンク・フロイド(Pink Floyd)には全く興味がありません。ピンク・フロイドは嫌いではないですが、同バンドの「信者」は嫌いです。何でも後発の方が有利ですが、プログレッシブ音楽は90年代以降に完成したと思うので。スティーヴン・ウィルソンは先駆者達の影響を受けつつも、とっくの昔に彼らを超えてしまいました。それを認められない人達が、ある程度存在するようです。
ついでに余談ですが私がいつも首をかしげるのは、巷でヘッドホンやスピーカーの評価に使われる音楽が、常にクラシックやジャズ、アニメ音楽にほぼ限定されている件です。音響機器はクラシックやジャズだけを鳴らすために設計されている訳ではありません。また、〇〇向けという評価も、評価する人がジャズ好きならジャズを最適に鳴らす為に(自分好みに)環境整備している筈なので、「このスピーカーはジャズを鳴らすのに最適」などといった評価は的外れに感じます。建材や部屋の面積や間取り、アンプや再生機など組み合わせは無限ですから。ただ使用機材と設置環境、事実だけを伝えてくれればいいです。
また、アニメ音楽を聴くのは大変結構ですが、私はあれを文化とは認めていません。アニメの娯楽としての地位の定着と経済的効果は認めますが、あれを本物の音楽・文化とは同列に並べたくないので。お金をかけて高級機を揃えて、配置を何度も修正する努力を向けるべき対象とは到底思えません。誤解が無いように言っておくと、私は漫画もアニメもそこそこ好きです。アニメの主題歌って、映像と一緒に流れる事によって、本来の価値が出ますよね。
最後に
分かっていたことですが、近隣住民に配慮して使用する時間が限られているのと、読書や作業に集中している時は音を一切排除したい性格なので、使用頻度は今のところ低いです。また、スピーカーを初めて試聴と言う事でスピーカーやアンプの性能の比較や、果たして音質が本当に優れているのかいないのか、断定することが難しい事情があります。あまり詳細な解説が出来なかったので、時間をかけてスピーカーと付き合って、追記していけたらと思います。
記事公開 2022年1月2日
最終更新 2026年7月11日


