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郵政民営化と全ての元凶、新自由主義 その一

初めに

小泉純一郎郵政民営化を唱えてから早いもので、既に20年もの時が流れました。当時の私はまだ若く今よりずっと愚かであったので、政治経済に興味が無く、小泉も何か変わった奴だなぐらいにしか思っていませんでした。少なくとも、悪人として目に映る事はありませんでした。

バブル期の日本人の平均年収は600万円に達したこともありますが、現在は300万円程度とされています。この30年ほどで年収が半減していると言うことです。その間にも消費税の増税、社会保障費の負担増、新たな税金の追加や物価の上昇など、特に低所得層の生活は確実に厳しくなっています。実質的に所得が下がり、生活に必要なお金は上昇し、物価はじわじわと上がり続けているのなら、これは絶対にデフレではありません。繰り返します、日本はデフレではありません悪性のインフレ、即ちスタグフレーションです。デフレ、デフレ、と呪文のように唱える人が多いですが、低所得層の視点から見れば、絶対に物価は高くなっている、生活が厳しいと感じるはずです。

小泉政権の発足が2001年。この年はあの9・11のテロがあり、国の内外を問わず正に激動の幕開けだったと思います。小泉政権では郵政民営化以外にも道路公団の民営化解雇規制・派遣業の規制緩和など様々な政策が取られましたが、いずれも日本国民の利益となる結果を生んでいません。この20年近くに及ぶ自民党政権下でいかにこの日本が壊されたか、分かっているようで分かっていない、或いは気づきもしない人達が非常に多くいると思います。少しでも多くの人達が真実を目の当たりにすることを求めます。

今回の記事は、日本の政治・経済を語る上で欠かせない新自由主義や、郵政民営化がもたらした貧困や格差などについて取り上げています。もう多くの国民は郵政民営化など忘れているでしょうし、これまで民営化の実態を世間では正確に理解されていなかったと思います。ここにまた一つ日本の暗部(或いは恥部)を暴き立て、悪を糾弾していきます。

新自由主義の始まりと日本の凋落

新自由主義の誕生

まず最初に理解しないといけないのは、郵政民営化はアメリカが日本に要求したものであり、その背景にある理念が同国で1970年代に誕生した新自由主義である、と言う事です。レーガン政権下で大幅な赤字財政となり、海外(特に東アジア)の国富をアメリカに還流させることを対外政策の基本に置きました。債務国に転落したアメリカと違い、日本は債権国となっており、多額の金融資産を持っていました。そこで目を付けられたのが郵便貯金です。

竹中平蔵を親友と呼ぶ仲と言われている政治学者のケント・カルダーは、「公共投資に使われている郵便貯金を日本で使わせないようにして、アメリカのものにしよう」、意を汲めばそのような趣旨となる論文を出しています。郵便貯金があれば世界経済の活性化に繋がる、発展途上国の援助や世界的な環境対策の資金源になるとか、そんなところです。

新自由主義(ネオ・リベラリズム)思想を立ち上げたのはミルトン・フリードマン(1912-2006)です。フリードマンの両親はハンガリー出身で、ユダヤ人の迫害を恐れてニューヨークへ渡りました。生計を立てるために必死に働き、苦学してシカゴ大学で修士号、コロンビア大学で博士号を取得しました。その後、コロンビア大学や連邦政府で働いた後にシカゴ大学教授となりました。

「私が自由な市場に委ねるのが一番良いということを手法するところには、国家も制度も民族も一切力を持たない、一つのメカニズムが人間社会を結ぶという事が最も幸福であるという、ヒットラー治下の、スターリン治下のユダヤ人の血の叫びである」

これはフリードマンが残した言葉で、正に新自由主義の生まれた背景が察せられます。過酷な迫害の歴史を通過したが故に、国家も民族も制度も、何もかもが信じられなくなったのでしょうか?行きついた先が人間性を無視した経済思想とは、生い立ちを考慮に入れても認め難いものがあります。自分が苦労したから他の人達には同じ思いをしてほしくない、と考えられるかどうかで人間性が分かれます。日本人で言えば橋本徹が近いでしょうか。橋本の幼少期は貧困であり、苦労して進学したかもしれませんが、それで得た知識や社会的地位を世の為に使うことはありませんでした。自分がそうされたように、自身もまた弱者叩きに走りました。

さて、どうして新自由主義という思想が出現したのか、という疑問があります。第二次世界大戦後のアメリカは、大恐慌の反省から自由放任資本主義を除去し、経済成長と経済的平等を両立させる事に努めました。法人税と所得税は共に累進課税とし、資本家の富を労働者にも公平に分かち合い、福祉型資本主義の時代に突入したのです。経済破綻を防止するための安定化措置を経済に取り付け、50~60年代には中産階級が増え、累進課税と政府投資による官民協調で、安定した社会を築きました。

こうした中で保守的な富裕層(代表的なのがネオ・コンサーバティブ)などが富の配分を増やすため、新自由主義と結託して福祉型資本主義の壊滅に乗り出しました。要は儲けが減ったものの依然裕福なのは変わりない連中が、「中間層を蹴落としてでも再度巨富を手中にしたい」という極めて身勝手な理由から暴れ始めた」という、何とも情けない話です。悪党と悪党を掛け算すれば、出る答えは自ずと分かります。馬鹿が二人以上遭遇すると交通事故が起きるのと同じです。

新自由主義の特徴

新自由主義の行動原理は儲かる為なら何でもやる、社会的倫理観・道徳観など考えなくてよいとあります。いい例の一つとして、軍事行動の民営化があります。2003年に始まったイラク戦争で一躍有名になった民間軍事請負会社=PMC(Private Military Company)です。金の為なら人の生き死にすら盤上の駒と化します。新自由主義の特徴を挙げると、①市場万能主義②小さい政府③金融万能主義、この三つがあります。

①市場万能主義は、経済活動を可能な限り自由にすれば自動的に富の最適配分がされるので、経済の自由化・規制緩和をせよと言う主張です。

②小さい政府の主張は法人税と所得税の累進課税を廃止して、一律税制とする。それから社会保障制度の廃止。即ち、富裕層を減税すればその富を消費や投資に回すので国家が栄える、下々の者達はトリクルダウンのお零れにあずかり、公助ではなく自助、何でも自己責任。このような解釈となります。

③金融万能主義の主張は、「経済成長は金融政策だけで行うべきであり、財政政策は使うべきではない」とあります。

特に二番目は今の日本でも実際に起きている事で、非常に分かり易いです。日本の法人税は大企業、中小・零細を問わず一律で、三党合意(自民・公明・民主の三党)により法人税減税の穴埋めに消費税を増税しました(実際には消費税率3%の時から穴埋めは始まっていた)。正に大企業・株主・金持ち優遇の弱者切り捨て。実際には800万円以下の企業所得には軽減税率が適用(最低で15%)されていますが、それ以上はいくら稼ごうが一律とは乱暴すぎます。大企業優遇税制については、日本共産党が説明しているページがあるので、それを見ると良いでしょう。大企業は人件費が下がる一方で、内部留保と利益配当が増加しています。内部留保の金を積み上げると月に到達するそうです。その金を社員へ還元したり、投資に使うという発想が出てこないのが日本人です。また、日本企業の株主の3割が外国人であり、その内6割(うろ覚えですが)がアメリカ人です。日本の資本が海外に流出しているという事です。人件費が下がっているのは間違いなく、派遣業などの非正規雇用が増えたことが一番の要因でしょう。浮いた分が還元されずに溜め込まれるか、流出している訳です。

所得税は累進性であるものの、1億円以上の所得がある富裕層ほど段々と負担率が下がり得をしています。資産家は富の再配分など考えません。期待するだけ無駄です。水も漏らさぬほどの勢いで富を独占し、下々には落ちてきません。トリクルダウンなど絵に描いた餅です。

海外の失敗例

1979年のイギリス下院銀選挙で、マーガレット・サッチャーは新自由主義的な政策を掲げて大勝しました。大企業に有利な大幅な減税と規制緩和、反労働組合政策を取って従来の経済政策の大転換を試みました。その結果、製造業は低迷して失業率が上昇、労働組合はストライキを起こし、社会的混乱が生じました。また、医療、社会保障、教育の財政支出を削減しました。特に医療は大幅な支出の削減をした結果、国民皆保険制度が破壊され、病院の閉鎖や優秀な医師の海外流出を招きました。トリクルダウンは起こらず、大幅な財政赤字が拡大したので、人頭税を持ち出そうとしましたが国民は猛反発をしました。1990年、サッチャーは辞任せざるを得ませんでした。

2013年4月にサッチャーはこの世を去りましたが、葬儀会場では「国を潰した魔女」、「国葬は無駄だ」というような罵詈雑言が飛び交っていたようです。「鉄の女」と呼ばれていたようですが、価値の無い屑鉄だったようです。この辺り、稀代の極悪人である安倍晋三が死んだ時に「死んで良かった!」という声が素直に上がらない日本は、やはりおかしいのだと感じます。

1981年1月、共和党のロナルド・レーガンが大統領に就任しました。レーガンも新自由主義政策を持ち出し、軍事拡張を優先しました。ここが戦後の福祉型資本主義を破壊し、新自由主義への転向へと至る歴史的な政策転換点となりました。軍事拡張は東西冷戦真っ只中であったので、強いアメリカの演出が必要であるという歴史的背景もあるでしょう。財政支出面を見ると、教育や福祉、国内開発などの予算を軍事費に振り向けました。前任のカーター政権では個人の所得税は14~70%、法人税の最高税率は46%でした。

これがレーガン政権になると、個人の所得税は徐々に引き下げられ最終的に28%、法人税は34%まで下がりました。当然の事、トリクルダウンは機能せず税収は激減、財政は大幅な赤字に転落しました。経済の大部分は庶民が支えているので、庶民の所得が減る=消費の減少が経済の低迷に繋がるのは当然の帰結です。さらに金融政策でドル高政策を採った事によって、製造業は海外移転を増やし、完成品の輸入が増加しました。加えて景気回復による輸入増加で貿易収支が赤字となりました。

2013年次のアメリカ国債の保有率を見ると、政府内保有が41%、59%が民間保有です。その内、外国人投資家は全体の34%で、さらにその内の21%は中国が保有しています。中国に対して口だけは威勢がいいのに、何も手出し出来ないのはアメリカもまた中国に依存しているからです。

日本は「グローバル」という言葉を盛んに使用していますが、世界の動向から全く学んでいないのが現状です。80年代において既に新自由主義が機能しない事が証明されているにも関わらず、20年近く経ってからわざわざ新自由主義的経済を導入するあたり、知能の低い民族とみられても仕方ありません。

新自由主義による日本改造計画

対日年次要望書という言葉を聞いた事があるでしょうか。1993年7月に宮沢喜一ビル・クリントンが合意したのは「日米間の新たなパートナーシップ」という書面があります。毎年、双方から要望書を書面で出し合おうとの提案がありましたが、宮沢は当初は否定的だったようです。しかし、94年の村山政権から相互に要望書を出し合うようになり、この時から毎年要望書が送られるようになりました。

小泉が丁度この頃から民営化を唱え始めていたのは偶然ではないでしょう相互に出し合う要望書とありますが、実際はアメリカの一方的な要求、もっと強い言葉で言えば日本という家臣に対して、アメリカという殿様が突きつける要求・命令の類でしょう。この文書は在日アメリカ大使館のホームページに公開されている外交文書です。

大使館では毎年、年次改革要望書の最新版を日本の記者に配布し、内容の説明も行ってきました。それにも拘わらず、日本の政府も報道機関も内容を公開せず、日本国民が知ることはありませんでした。2009年2月5日の衆議院予算委員会の質疑応答で、麻生太郎中曽根外務大臣が初めて年次要望書の存在を認めました。15年もの間、日本国民に知られることなく、アメリカの要望に従って日本改造を行ってきたのです。

2001年に小泉内閣が発足しましたが、小泉が掲げた構造改革とやらは、具体的に対日年次要望書の内容を実現しようと試みたものです。小泉、竹中の悪党一味によって色々な改悪が行われましたが、有名なものの一つは労働派遣法の改訂でしょう。1996年~2004年まで段階的に改訂されましたが、2004年の改訂では派遣労働の期間を1年から3年に引き伸ばし、それまで除外されていた製造業や社会福祉業での派遣労働を認めました。結果として、企業は派遣労働の割合を増やし(正社員を減らし)、実質的な賃金引下げを可能にしました。

また、解雇規制の緩和により失業者も増えました。失業者が職を求める先が人材派遣会社です。竹中平蔵が取締役会長を務める有名な人材派遣会社、(株)パソナグループがあります。自分が官僚を務めている最中に法改正をして、失業者を増やし、その受け入れ先を予め作っておく。政策を私利私欲のために利用したのです。正に我田引水。派遣業は現代の口入れ屋です。口入れ屋とは身元保証をして職を斡旋する代わりに、稼ぎをぴん撥ねする江戸時代の派遣業です。世界の派遣業の大半が日本に集中しており、ぴんはね率が最も高いのも日本です。尚、竹中は2022年8月19日付で代表を退任しました。

経営者の皆さん、人材派遣会社は絶対に利用しないで下さい。目先の利益しか見えない会社はどの道、繁栄することは絶対にありません。労働者が適正で充分な対価を得る事で消費し、それにより経済は回ります。社員の定着率が低い会社は入れ替えの度に無駄な事務が発生し、教育が必要になります。これは本当にただの無駄です。少なくとも私がこれまで見てきた限り、多くの零細・中小企業では中間層の厚みが乏しいのが現状です。大企業からの天下り社員や、大して仕事が出来ないくせに長年会社に寄生し続ける連中が穀潰しと化し、理不尽に負荷を押し付けられた若年層が泣く泣く出入りを繰り返す地獄絵図が展開しています。現在30~40代の昭和生まれ世代はまだまだ優秀な人材が多いですが、その人達が退職したら日本の経済は終わるのではないでしょうか。あと20年ぐらいですかね。人を育てて労働の対価を惜しみなく払うことで、労働者もまた会社の要望に応え十全に力を発揮し、会社を支えてくれます。

いつまで自転車操業や経費喰い潰しの同族経営、人材の使い捨てを繰り返すのでしょうか。人の出入りが激しく、それが当たり前になっているので、誰かが辞めても気にしない人達が非常に多くいます。何か縁があって出会ったわけですから、人ひとりが職場から消える事を惜しみ、重く受け止めて欲しいと思います。そうでなくても自宅勤務、ZoomやTeamsの会議、連絡はLINEのみと人と顔を合わせることが減っている現在、ますます人間関係が希薄な社会になっています。袖振り合うも他生の縁、と言う言葉があります。少しでも関わったのなら、その人はあなたの人生の一部です

国家による企業潰し

金融不安を起こしていないUFJ銀行を意図的に潰す。金融史上、前代未聞の出来事が日本で起きていました。UFJ銀行は2004年3月の決算で、業務純益(営業収入から経費を控除した利益)を7,946億円挙げ、東京三菱銀行の業務純益6,548億円を上回っていました。しかし金融庁(アメリカが日本に作らせたとされる)はUFJ銀行に対して「多額の不良債権があるから1兆2000億円を貸倒引当金に積め」と指示し、この結果同銀行の最終利益は4,000億円のマイナスに落とされたのです。省略しますが、UFJ銀行が信用不安を引き起こしている事実は無く、市場に金融危機があるわけでもありませんでした。

竹中平蔵が金融担当大臣であった金融庁は、UFJ銀行に倒産圧力をかけ資本不足に追い込んで、外資に譲渡するのが狙いだったようです。結果として外資には渡らなかったものの、UFJ銀行は東京三菱銀行に合併を申し入れて現在に至っています。

この事件はUFJを外資に売り渡すための工作、という見方がありますが、実は二段構えだったと思います。外資が買収しても、三菱が買収しても日本政府にとってはどちらでも得をする内容だったのではないでしょうか。その根拠として、UFJ銀行の主要な融資先であったダイエーミサワホーム産業再生機構送りにされ、竹中と小泉の息がかかった金融官僚達が財政破綻に追い込みました。2004年9月中間期にミサワホームの決算が突然、下方修正されました。ミサワの監査を担当したのは中央青山監査法人ですが、同法人の理事長は竹中金融プロジェクトの一員である奥山章雄です。決算の下方修正を契機として、トヨタ自動車がミサワを買収してしまいます。トヨタはトヨタホーム株式会社を所有し、住宅販売を展開していますので、大変美味しい思いをしたでしょう。そして竹中の兄である竹中宣雄は2008年にミサワの社長に就任しています。トヨタ自動車は輸出戻し税を貰っていますし、ハイブリッドカー1台当たりに最大50万円もの補助金を受け取っているので、笑いが止まらないでしょう。ちょっと政治献金を払うだけで、それ以上のお得な優遇を受けられるのですから。トヨタが日本経済を支えているだか何だか知れませんですが、支えなくて結構だ!!自民党一緒に潰れてしまって構いません。私はトヨタの車は絶対に買いません。

このUFJとミサワホームの件は、正に金の為なら人を不幸にしても構わないと言う、新自由主義の考えを具現化したものでしょう。

ここからは「その二」へ続きます。

記事公開 2022年4月10日

最終更新 2024年6月16日

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