初めに
2025/11/22開封、価格は3,390円。度数47.0度、容量500ml。産地はアメリカはイリノイ州、シカゴのコーヴァル蒸留所です。同蒸留所の商品を購入するのは久しぶりでした。コーヴァルの感心するところは、有機素材を大事にしているところ。これを「意識高い系」と馬鹿にする連中がいますが、そのような連中こそ軽蔑の対象であり、唾棄すべき存在です。

安売りしていたので気が向いて購入しましたが、容量が500mlなので所謂フルボトル換算すると、そこそこ値が張る部類でしょう。ラベルのデザインはイスラム建築的と言うのか、独特で目を惹きます。
色・香り、味わい
色は無色透明。開栓して瓶の口から匂いを嗅ぐと、香りの正体が何かよく分からないが、確かに強い存在感を醸し出していました。とても濃くてつんとした強い香り。香りから、美味い予感がしました。消費が進むと香りが落ち着いて、ジュニパーらしさが出て来ました。そして、柑橘の香りと香水の様な上品な香りも。最初の強い香りは何だったのか。後になって思うと、ジュニパーが凝縮されたものだったかもしれません。
個性あるラベルのデザインと同様、味わいも恐らくこれまで体験した事が無い、独特のものがあると思います。口に含んだ瞬間のアルコールはとても滑らかだが、中間から締めにかけて右肩上がりにかーっと強くなる感じ。少し舌に滑りを感じ、口に含んだ瞬間は少し甘い味わいがあるものの、中間から締めにかけて辛口になります。中間以降から、香草のようなすっとした爽やかさがあります。余韻に少し塩っ気あり。全体的に柑橘の爽やかさや青臭さ、苦みがあります。香草の風味も強い。ヴェルモット的と言うのか、少し薬用酒的な性格が見えると思います。宣伝に「鼻に抜けるジュニパーの香り」とありますが、私には嗅覚でも味覚でも、最初の内はジュニパーを強く感じられませんでした。

二杯目ぐらいからジュニパーの香しさや、甘さを理解出来ました。恐らく華やかなジンに分類出来ると思いますが、サイレントプールやフェルディナンズとは方向性が違うでしょう。宣伝の「ワイルドフラワーの香り」はとても抽象的な表現ですが、野性的な強い香味があるのは確かです。土臭さがあるが、野暮ったい泥臭さではないかと。野性的で洗練とは少し遠い印象だが、嫌な感じではありません。
三杯目からはっきりとジュニパーの香りが感じられるようになり、甘さが増幅しました。香り豊かで味わい豊潤な「濃い」ジンですが、何だろう。とても自己主張が強い。唯一無二の個性があるでしょう。私の語彙で上手く表現出来ませんが、洗練と野性的な荒々しさの間を、行ったり来たりしている様な印象です。詰まり、良いとこ取りでしょうか。
消費が進むと、最初に感じた塩っ気が落ち着きました。その代わり、舌に残るような酸味を強く感じるようになりましたが、この酸味もやがて感じなくなりました。液体を口の中で転がし、ぎゅっと噛み締める様に飲むと、この酒の濃さがさらによく分かる。豊潤なジュニパーと、苦さと爽やかさを伴った柑橘が口中で踊る。ジンの基本であるジュニパーの存在感が保障されており、好印象。本当に味わいが濃いジンです。味わいは複雑より率直で、輪郭がはっきりしているでしょう。ちまちま点数を稼ぐアウトボクシングではなく、ジャブ一発で勝負が決まるヘビー級の様な明確さがあると思います。半分以上消費した後、アニスの香りが強く出て来たと思います。濃厚なジュニパーに追従する様に、アニスが続きます。
ジントニックとマティーニ
中々高価なジンなので、ジントニックにするには少し気が引けますが。今回はライムではなく有機栽培のレモネーディアを使いました。理由はライムが手に入らなかったからです。輪切りにした物の半分をさらに半分にして添え、絞り汁を適当に。グラスはいつものリーデルのタンブラー、トニックはウィルキンソン。ジンは45mlで、トニックをグラスの八分目ぐらい。レモネーディアの青臭さがあり、味わいはすっきり爽やか。程良い甘さがあり、ジュニパーの風味が締めになって現れて来ます。悪くない。甘さの根源はレモネーディアにあると思われます。レモネーディアなるものを食すのは初めてで、名前からして勝手にレモンの味わいを想像していたが、果肉を齧ってみると驚く程甘かった。レモンよりは蜜柑に近いでしょう。皮は手で剥ける程柔らかいと言う宣伝通り、皮ごと食べても美味しかったです。ジンの味わいを生かすならライムの方が良いかもしれないが、たまには違った事をするのも悪くないでしょう。旬があるので、店に置いていない物はどうしようもないですし。次はレモンにしてみましょうか。


次はマティーニ。ミキシンググラスは冷凍庫でよく冷やしました。グラスはリーデルのヴィノム・マティーニ。ヴェルモットはフェルディナンズのドライヴェルモット。ジンとヴェルモットの比率は3:1(45ml対15ml)。撹拌は軽めで。コーヴァルのジンの特徴をよく残し、ジュニパーの香りと香草の様なすっとした感じは健在。全体的に少し塩っ気を感じました。余韻の方でヴェルモットの存在が出て来ます。ジン・ヴェルモット共にドライを謳っているだけあって、その様に仕上がったと思います。悪くはないが、ジンの個性が強過ぎるだろうか・・・不味くはないが、自分の中でしっくり来ない出来でした。
最後に
高価なジンなので常飲用とは行かないが、若し仮に700mlでこの価格なら、天下を狙えたかもしれないジンだと思います。その様なジンは他にもありますが。何にせよ、少なくとも価格に見合った美味さがあったと思います。カクテルよりはストレートで楽しむべきでしょう。美味しかったです。ご馳走様。
記事公開 2025年12月31日

