酒と人生、バー通い 其の七

  • 2024-02-03
  • 2024-05-06
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2023年12月某日 C店

2023年12月某日。勤め先の忘年会に参加。一次・二次会の後、一人抜け出して地元のバーC店に向かいました。このお店に行くのは6年半ぶり以上でした。

換気が悪い店で安酒を飲んだ後なので既に悪い酔い方をしている状態で、止めれば良いのにふらふらと酩酊した足取りで、誘蛾灯に直行する虫のように店の扉を潜ってしまいました。徒歩30分かかる道程を歩いて来たので、行かなきゃ損みたいな馬鹿らしい思考が働いて、3軒目の店へ梯子してしまいました。訪れたのが随分前の事なので店の雰囲気、酒の品揃えや居心地等の記憶が全くありませんでした。

最初に頼んだのはマティーニ。ちょっと柑橘の風味が強めだった気がします。次に頼んだのがアハトロのディヴァ。テキーラには珍しく、桃色に色づいています。赤ワインの樽で短期熟成しているので、色移りがあるのでしょう。アハ=あっち行け、トロ=牛の意味になります。家族経営のオーレ蒸留所の商品で、原料はアガベ・アズール100%です。アルコール発酵にアガベの繊維質も混ぜる事で、味わいを強くしているとか。大分酔っていたのもあり、殆ど味わいについて記憶がありませんが、このディヴァはまた飲んでみたいと思うほどには美味かったと思います。2杯飲んだだけでいよいよ気分が悪くなり、逃げるように店を出てしまいました・・・

2024年1月某日 C店

年が明けて2024年の1月某日。今度は体調を万全に整えた状態で再びC店に向かいました。前回店主と思しき人物と会話した時は真面目で固く、ちょっと怖い人のような印象を受けました。が、今回はむしろ控え目で物静か、バーテンをやっているのに酒が余り強くないと言う話を聞いて、ちょっと可愛らしい人だと思いました。

バーに入ると先ずカクテルを頼みます。カクテルの出来具合で大体その店の(バーテンの)実力が分かるからです。最初に頼んだのは定番カクテルのジントニック。たかがジンにトニックウォーターを注ぐだけのこのカクテルも、材料選びや攪拌、温度等でがらっと味が変わるので、素人と玄人の差は歴然です。素人違って本職は、攪拌の時に無駄な音を立てません。寿司と同じで体温が移らないように気を付けていると思いますが、動作が機敏で無駄が無い印象です。

2杯目はクエルボのアネホ。一つ前の旧瓶だと思います。記録を取りながら飲んでいた訳ではないので、詳しい事は記憶にありませんが、やはりブランコと違い熟成感があり美味しかったです。テキーラらしさを楽しみたいなら、ブランコやレポサドの方が良いかもしれませんが。時間の経過と酔いが原因でいつも酒の味わいを覚えていないので、今度からは手帳を持参して控えてみようかと思います。

3杯目はポート・シャーロットの10年。これはブルイックラディ蒸留所の商品で、クラシック・ラディオクトモアの中間に位置する物になると思います。瓶にHEAVILY PEATEDの文字が確認出来ますが、フェノール値は40ppmで大した事ありません。以前14年物を飲んだ時は余り印象に残りませんでしたが、この10年物は美味く感じました。少し発酵臭があり、味わい深く、ピートが大げさでなく程良い感じなので好印象でした。

最後の4杯目はラスティーネイル。ウィスキーにはフェイマス・グラウスを使っています。リキュールを使うので甘味が強いカクテルですが、C店では香り付けにオレンジを使っている(確か)ようでした。オレンジの爽やかさが良く効いていて、さっぱりとした風味が添加され諄くない仕上がりになっており、私が今まで飲んだ中で一番美味いラスティーネイルだったと思います。去り際に「また来て下さい」と言われ、当然社交辞令でしょうが、とても良い時間を過ごせたので再度来店したいと思いました。

2024年1月某日 B店

続いてB店。知り合って長い店主なので、やはりこちらが一番居心地が良い。初めにビール、それから旬のカクテルを頼みました。確か金柑を使ったカクテルだったと思いますが、果肉が入っており美味しかったです。今回は大分画像が暗く分かり辛いです。

3杯目は年末にウシュクベを久しぶりに飲んで美味かったので15年物を注文。4杯目はブレンドウィスキーのシンジケート12年。B店主が確か土屋守氏が書いた本だったと思いますが、それを寄越してくれたので、本に目を通しつつ店主の説明に耳を傾けました。

ラベルには58/6の表示がありますが、1958年に地元の6人の仲間=シンジケートが集まり、モルト比率65%以上の「黄金比」スコッチを自分達の為に創ろうと考えたのが発端です。この「自分達がただ飲みたいから作る」と言う発想が素晴らしいですね。仲間の一人が倉庫で見つけた18種類のシングルモルトと、2種類のシングルグレーンをその場で全樽買い取ったのが、このスコッチの始まりだそうです。口当たりは軽いですが、華やかで香り高く、美味いスコッチでした。スペイサイド、ハイランドのモルトが主体のようですが、それが良く現れていると思われます。角川春樹事務所が輸入元と言うのが興味深いですね。

今でこそシングルモルトが流行っていますが、かつてはブレンドウィスキーの方が主流でした。現在はシングルモルトの質が低下しているので、当然ながらブレンドの質も同じく下がっています。古い原酒を使ったブレンドは美味いので、老舗のバーでお勧めのブレンドはないか尋ねてみると良いでしょう。このシンジケートもバーで見かけた際は飲む事をお勧めします

5杯目はシャトー・ド・ブルイユのラム・エクスプローラー。ガイアナの2年物です。これが良く出来ていて、オールドオロロソシェリー樽、バーボン樽を使用で2~5年熟成をブレンドとありますが、最低年数2年とは思えない熟成感がありました。その日の体調や個体差等もあるかもしれませんが、上質のスコッチのような美味さがありました。ラムもホワイトラムの方がラムらしいかもしれませんが、やはり琥珀色の魅惑には勝てません。締めの6杯目はワイルド・ターキー101旧瓶。現行品と比べて、こちらの方が円やかで旨味が勝っているように思えました。

今回は収穫が多かったと思います。アハトロ、クエルボ、ポートシャーロット、ブルイユのラムは今後自分で購入してじっくり味わってみたいと思います。

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