PJ Harvey 2025年 大阪ライブ

初めに

2025年3月19日。この日は、私にとって記念すべき思い出の日となりました。幸運にもPJハーヴェイ(Polly Jean Harvey)の大阪ライブを観る事が出来たからです。Wikiだと日本語の読みは「ポリー・ジャン・ハーヴェイ」とされていますが、私は「ポーリー・ジーン・ハーヴェイ」の方がしっくりきます。PJハーヴェイのライブは今回が初参加でした。

私が最後にライブへ行ったのが、もう二十年以上前の話になります。2002年のサマーソニックと、その後にスウェード(Suede)マニック・ストリート・プリーチャーズ(Manic Street Preachers)の単独公演を観にいったぐらいです。ずっと仕事で忙しく、そしてその忙しさを言い訳に、自分の人生をより良くする努力を怠っていました。今の仕事に転職する前の十数年間は、本当に地獄でした。現在は旅行やライブへ行く時間のゆとりや、精神的な余裕が得られるようになって、本当に良かったと思います。

私は普段から自分が好きなバンドを見張っている訳ではなく、たまたまHMVの購入履歴から情報が来たのがライブを知るきっかけでした。これは絶対に行かねばと思い、昨年の上高地旅行(別記事有り)で滞在したホテルのロビーで、販売開始時刻を冷静にパソコンの前で待ち構え。その時が来るや即行で予約しました。すぐに売り切れるかと思いましたが、意外にも私が購入してから暫く経っても売れ残っていました。最終的に完売したのでしょうか?

当ブログは一応政治系ブログ(を目指している)であり、種々雑多な記事を取り揃えています。当記事の題名はライブになっていますが、ライブとは関係の無い話題も大量に盛り込んでおります。正確には、ライブを含めた旅の記録みたいな感じです。では、当ブログらしく細かい事まで記して行こうと思います。

PJハーヴェイとの出会い

私が最初にPJハーヴェイを知ったのは、確かアメリカのバンドのスパークルホース(Sparklehorse)経由だったと思います。バンドと言うよりは、中心人物のマーク・リンカス(Mark Linkous)の個人活動と言う感じだったのでしょうか?あまり詳しくないですが。スパークルホースと言えば、照明を雇うお金が無かったので、レディオヘッド(Radiohead)ジョニー・グリーンウッド(Jonny Greenwood)が照明係になってくれた(その時レディオヘッドの前座だった)事があるとか。スパークルホースの三枚目のアルバムit`s a Wonderful Lifeで、PJハーヴェイが所謂バックボーカルで出演しており、それが彼女の名前を知る切っ掛けだったと記憶しています。とても悲しい事にマーク・リンカスは2010年、銃を使って自殺してしまいました。音楽関係は自殺が多いですね・・・他に今世紀に入ってからだとチェスター・ベニントン(2017年死去)、キース・フリント(2019年死去)も自殺でした。テレフォン・テル・アヴィヴ(Telefon Tel Aviv)のチャールズ・クーパー(2009年死去)も状況を考えると事故ではなく自死のような・・・

さらに元を辿ると、スパークルホースを知ったのがアドラブル(Adorable)ピート・フィジャルコウスキー(Piotr Fijalkowski)の個人サイト(随分前に閉鎖したと思われる)が情報源でした。確か「nervous system」みたいなサイト名だったと思います。そこで彼が、その年ごとのお気に入りアルバムの紹介みたいな事をしていて、その中でスパークルホースの名を目にしたと思います。他にはデウス(dEUS)ゴールドフラップ(Goldfrapp)トレイル・オブ・デッド(…And You Will Know Us by the Trail of Dead)など素晴らしいバンドを数多く発見し、一気に音楽の幅が広がりました。特にデウスを筆頭にベルギー音楽への道が開けたのが、とても大きな収穫となりました。ピートに感謝です!アドラブルは今でも色褪せない最高のバンド。シューゲイザー系とされていますが、私はマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)より、遥かに重要なバンドだと思っています。

さらにアドラブルは、マニックスの情報をネット上で調べていた時、偶然その名を発見したのが出会いでした。話が少し長くなりましたが、色んな偶然の繋がりが私をPJハーヴェイの元まで運び、最終的にライブに辿り着いたのは運命だと思います。

新幹線に乗って大阪へ

ライブ当日。私が起床した時は、まだ昨晩から雨が降り続いている状態でしたが、出かける頃には曇天だけれど雨は止んでくれて助かりました。日頃の行いが良いお陰でしょう。直前まで服装で悩みましたが、結局洗濯に困らない動き易い服を選択。お気に入りのkiryuyrikの服はやめて、無印良品にしました。私は最近仕事着や家着として、そして活発に動いたり汚れを気にせず着られる服として、無印良品の製品が重宝しています。地味だけれど飽きがこないデザインと良心的な価格、環境に配慮した素材から作られていたり、なかなか感心な企業だと思います。

今回も休みを繋げてゆっくりと羽を伸ばす事が出来るので、気分は上々。旅はいつも支度や移動が億劫ですが、先に待つ楽しみを思えばそれもやがて霧散。最近は車での移動に疲れていたので、お金は気にせず電車で行く事に。年が明けたらすぐに宿と電車の予約を取ったので、準備は万全。バスや電車を乗り継いで旅行に行くのは、かなり久しぶりでした。地元の最初のバスが予定外に遅れ、やきもきさせられましたが、一時間程ゆとりを設けていたので大丈夫。電車の中で時間を無駄にしないよう本を持ち込んでいたので、腰を据えた後は有意義に暇を埋める事が出来ました。

新大阪の駅は地元の駅と違って人で溢れ返っており、降りた瞬間に気持ちが悪くなりました。日本人だけでなく外国人も多いせいですが、いい加減入国制限しましょうよ。外国人は来るな!とは言いませんが、さすがにこれは。今回の旅で、新幹線の予約にJRのスマートEXとやらを初めて利用しましたが、あまりの使い勝手の悪さに辟易しましたが、それについては後述します。

お昼からお酒!

丁度昼食時に新大阪の駅に着いたので、先ずはお昼ご飯を摂る事にしました。私は元々食に余り拘りが無く、ご飯より美味い酒を所望!と言う人間です。ライブへ行くお祭り気分もあって、昼からお酒を飲みたかったので、それっぽい店を探して勘で選びました。ケラケラケイヴと言う変わった名前のお店です。

私が注文したのは「お摘みセット」みたいなやつです。味付けは良く、盛り付け(見た目)も良し。値段は昨今の物価高を考えると妥当かもしれませんが、量が少ないと感じました。健啖家ではない私でも、物足りなかったと思います。

平日の昼間から生ビールをいただくのは最高の贅沢です。一人で一足早い乾杯をし、今夜はどんな曲が披露されるのだろうとか、期待に胸を膨らませて喉を湿らせました。ハイボールも飲みましたが、もっと濃ければ良かったと思います。

可も無く不可も無く、と言うお店でした。私が訪れた時はほぼ満席でしたが、殆ど待つこと無く着席出来たのと、食事の提供が早かったのもあり、悪くなかったと思います。

昼食を済ませた後、新大阪駅から今日のライブ会場がある、住之江区方面へ移動。新大阪から御堂筋線で大国町駅まで行き、そこで四ツ橋線に乗り換えて住之江公園駅まで行きました。所要時間は大体40分ぐらいだと思います。

ホテルにチェックインと時間潰し

住之江区に到着したのがチェックインより早い時間だったので、少し周りを見ながら時間潰し。住之江区は本当に何も無い所で(よく探せば名所があるかもしれませんが)、車の排気ガスとビルが大嫌いな私は、適当なお店でやり過ごす事に決めました。そこで重宝したのがお馴染みサイゼリヤ。特別美味しいとは言えないけれど、1,000円も払えば食事からお酒まで一通り楽しめたり、時間潰しに持ってこい。適当な摘みとワインを注文し、二度目の乾杯。この近くにライブ会場となるGORILLA HALL OSAKA(以下ゴリラホール)があります。ちょっと田舎い名前ですね・・・頃合いを見て席を立ち、宿へと向かいました。

この日宿泊したのは大阪ジョイテルホテルオスカードリームと言う複合施設の上階を、このホテルが占めています。駅の5番出口から行くのが一番近いと思います。私の姉がよく仕事の都合でホテルを利用するので相談したところ、Yahoo!トラベル(以下ヤフー)で予約を取ってくれました。何でもヤフーは当日までに宿泊料金が下がった場合、予約を取り直せば値下がりした料金で再予約出来るとか。一番高い時と比較すると、最終的に半額で泊まれました。今回の料金は、姉が「たまには払ってあげるよ」と気を利かせて負担してくれたので感謝でした。これから私もヤフーで宿を取ろうかな。

一階から直通の専用エレベーターに乗って受付へ。名前を告げただけで他に証明を必要とせず、実に滑らかでした。ホテルの廊下は何か良い匂いが漂っていました。廊下も部屋も奇麗で、施錠は今時のカード式。部屋は広くはないけれど、窮屈な感じはしません。広い空間は持て余すので、多少狭い方が落ち着きます。窓からは遠くに大阪湾が見え、開放感があります。何よりも、お風呂とトイレが綺麗で使い易いのが良かった。これが一番重要。無料で使えるWi-Fiも当然備えてありました。

ホテル内の写真を適当に掲載しました。最近PENTAX KFのレンズをマクロに替えましたが、視野角がかなり狭くなったので、引いて撮っても映る範囲が限られています。やはり広角が一番使い勝手が良いかなと思います。

ところで、チェックイン時に宿泊税なるものを徴収されました。私はこの時まで知りませんでしたが、2017年1月1日から大阪府で始まった法定外目的税のようです。宿泊料金に応じて額が変動します。下記画像にある通り、2025年9月から課税対象の拡大と値上げする気満々です。

出典:大阪府ホームページ

ホテルは全く悪くないですが、大阪府にはむかつきますね。以下「宿泊税の目的」の引用。

大阪府では、2017年1月1日から法定外目的税として宿泊税を導入しています。宿泊税は、大阪が世界有数の国際都市として発展していくことを目指し、都市の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に充当しています。

文面を見る限りは、入湯税の目的に近いようです。だとしたら、只の二重課税ですね。入湯税自体、目的外に使われているので、大阪府が推進する宿泊税も二の舞を演じるでしょう。自民党の大阪支部である大阪維新の会は、公共インフラの破壊や、公立学校を潰して跡地にショッピングセンターを建設するような人間の屑の集まりです。連中が掲げる「高校無償化」に騙されてはいけません。連中の目的は公立高校を定員割れに追い込み(既に廃校も出ている)、更地にして大企業に転売する事。そして大企業を儲けさせた見返りを受ける。いつものやつです。偉そうに徴収の目的を掲げていますが、本音は「自分達が自由に使える金を寄越せ」です。この連中が適切な予算運用する筈がありません。今年の参院選でぼろぼろに負ける事を期待します。いい加減に目を覚ませよ、大阪府民。

閑話休題。荷物を置いて腰掛け、夕方までパソコンでも弄るかと思った矢先、忘れ物に気付きました。パソコン一式持ってきたつもりが、マウスを忘れていました。私はタッチパッドが嫌いなので、常にマウスを使って操作します。

時間潰しになるし、快適にパソコンを使いたかったため、わざわざ付近の家電量販店までマウスを買いに走りました。余計な出費となりました。方向感覚がはっきりしないため、地元の人に場所を聞いて出立。ずんずん早歩きで向かっている途中、たまたま先程道を聞いたご婦人が後ろから自転車でやってきて、改めて方角を示して教えてくれました。大阪人情に感謝。マウスを入手してホテルに戻ると、この日の記録をエクセルで残し、時間を有効活用しました。

街は汚いけれど、大阪湾に浮かぶ夕陽が大変美しかったです。このホテルは高層階でも窓を全開に解放出来たので、強い風を受けて街の喧騒を聞きながらシャッターを切りました。宵闇の訪れと共に、ライブの時間が迫っていました。

待ちに待ったライブ

余り待ち時間が長くても嫌なので、開場時間に間に合うようにとかは考えず、適当な時間にホテルを出発。開場は18時30分、開演は19時30分と、入場してから一時間も余裕があったので、少し遅れ気味で現場に到着しました。着いた時には既に多くの人だかりが。ゴリラホールは幹線道路から少し奥まった所にあるので、外からは場所が少し分かり辛いと思います。私の整理番号は200番台でしたが、運営の手際が良いのか、すぐに入る事が出来ました。

入り口では入場券の確認と、ドリンク代600円の徴収がありました。別に払うのは構わないですが、これは最初から券の代金に含めれば良いのでは?と思いました。普段ライブに行かないので常識を知らなかったのですが、後から調べると入場券の利益は、殆ど主催者やバンドに支払われるため、このドリンク代が会場の貴重な収入源となっているそうです。私はハイネケンを選び、さっさと飲み干してしまいました。ライブ前に水分を多く摂るのは少し気が引けましたが、自分に「ライブに集中!」と暗示をかけておくと、意外とトイレが気にならなくなります。これは山歩きや映画館でも同じです。物販は見送って、四十分ぐらい前から会場へ入って待機しました。

会場は一階と二階に分かれていますが、私は一階の最前列から程良く離れた位置で場所取りしました。驚いたのがここでも外国人が目立ち、観客の少なくとも一割ぐらいが外国人だったように見えました(実際はそんなに多くなかったかも)。後から聞いた話だと、大阪は元々外国人が多いそうです。それにしてもここが日本であるのを疑う程に、外国人が多かったです。ゴリラホールは1,300人収容可能だそうですが、実際ライブに来ていた人の数はその半分ぐらいでしょうか?ぎゅうぎゅうに埋める程には人がいなかったと思います。

ライブは撮影禁止なので、全く現場の写真が無いのが残念です。個人的には撮影してもいいじゃん!って思いますが。海外のライブだと当たり前にやっていますしね。ごく一部の人は携帯電話で撮影していましたが、私はそれを咎めるほど器は小さくありません。しかし撮影禁止にするなら、ちゃんと映像作品として販売して欲しいです絶対買いますよ。私はバンドの一挙手一投足を逃さず目に焼き付ける為、直立不動で姿勢を正して観ました。途中脚が痺れました・・・

非現実的な夢の時間

ライブが始まる前、バンドの人達が時折準備の為に舞台へ出たり入ったりしていました。会場の照明はかなり暗く抑えられ、待機中の音楽が低く静かに場を満たし、舞台上には紫煙が揺らめいていました。一番緊張しているのは恐らくバンドの方だと思いますが、こちらも何やら緊張感がある待ち時間でした。期待感を膨らませると同時に、観る側も背筋を伸ばして態勢を整えると言うのか、心構えの様なものが必要とされているように感じました。どこか心地良く、ぴんと張った空気の中で、今か今かと待つ事40分。予定通り19時30分にライブは開始されました。

PJハーヴェイが舞台袖から現れると、聴衆から惜しみない拍手が。CDの音源か、YouTubeの動画でしか観た事も聴いた事も無かった、本物の彼女が眼前に現れ、正に降臨と言う感じでした。バンドの衣装は白っぽい色で統一され、ここ最近のツアーはずっと同じ服装で舞台に上がっているようでした。2023年から続いているツアー動画がYouTubeで確認出来ますが、この統一感は何か意味があるのかもしれません。PJハーヴェイ以外の顔ぶれは全員男性で、ジョン・パリッシュ(Jhon Parish)ジェームズ・ジョンストン(James Johnston)ジャン・マルク・バティ(Jean Marc Butty)ジョヴァンニ・フェラーリオ(Giovanni Ferrario)の四人です。多分名前はこれで合っていると思いますが・・・ジャンは多分、白い袴みたいなパンツを穿いていた人だと思います。

所謂セットリストですが、ご丁寧に記録しているサイトがあるのでそちらを参考にしました。私の記憶力では、半分ぐらいしか覚え切れなかったので助かります。ツアー中は曲目に大きな変化は無いらしく、どの会場でも数曲が入れ替わっているだけに見えます。

1.Prayer at the Gate、2.Autumn Term、3.Seem an I、4.I Inside the Old Year Dying

5.All Souls、6.A Child`s Question,August、7.I Inside the Old Year Dying

8.A Child`s Question,July、9.A Noiseless Noise、10.The Colour of the Earth

11.The Glorious Land、12.The Words That Maketh Murder、13.50ft Queenie

14.Black Hearted Love、15.The Garden、16.The Desperate Kingdom of Love

17.Man-Size、18.Dress、19.Down by the Water、20.To Bring You My Love

【アンコール】21.Horses in My Dreams

最新アルバムのI Inside the Old Year Dying(2023年発表)からの選曲が目立ちます。長い事追いかけている人達が多いのか、古い曲ほど盛り上がったと思います。尤も最近は静かな曲が多いので、必然的にわーっと騒ぐ感じにはならないと思いますが。私は音楽に関して聴くのは上手ですが、楽器はやらないし、音楽理論とか難しい事はよく分かりません。よって、あまり気の利いた事を記せないのですいませんが、覚えている事を思いつくままに残します。

今回のライブではっきり感じたのは、PJハーヴェイ一行は間違いなくライブバンドであると言う事です。最新アルバムはまだよく聴き込んでおらず、正直なところ一、二回聴いた程度では良さが分からない印象でした。それがライブでは化けた感じでした。たまにスタジオ音源より、ライブの音の方が遥かに良くなるバンドが存在しますが、PJハーヴェイもそれに近いかなと思います。ライブの方が圧倒的に良いバンドはクランベリーズ(The Cranberries)スティーヴン・ウィルソン(Steven Wilson)などが該当します。

最初のPrayer at the Gateは静かに厳かに曲が始まり、照明を浴びて歌い上げるPJハーヴェイは神々しいと表現出来る程美しかったです。照明の光が彼女の髪色と相まって、金色の後光のように見えました。顔を隠すような、独特の手振りがとても印象的で曲にも合っています。最初の一曲目で既にやられてしまいました。音楽性が全く違うけれど、アナシマ(Anathema)がブルガリアで行ったライブ作品のUniversalを観ると分かりますが、最初の曲Untouchable. Part 1で既に最高潮に達しています。これでライブが終わってもおかしくない、と言う程の盛り上がりを見せています。それと同じで、Prayer at the Gateの時点で「今ここで昇天しても悔い無し!」と思わせる程、素晴らしい歌でした。Untouchable~とPrayer~は性質が動と静の真逆の曲ですが、どちらも初手から頂まで駆け上ると言う点で一致しています。この日は声の調子が良かったのか、会場の設備等も良かったのか、とても声の伸びが良く澄んで聞こえました。

このライブでもう一つ気付いたのは、PJハーヴェイのバンドは超が付く程の技巧派ではない、と言う事です。ニック・ケイヴ(Nick Cave)Nocturama以降に出したアルバムは、段々と楽曲が単純に静かになっていった様に、彼女も同じような傾向にあると思います。単純に演奏が上手い・下手と言う話ではなく、余り音を詰め込まず、単純な素朴さの中に深い味わいがある感じです。持ち込まれた機材を見ても、単純に持ち込み量の制限だけでなく、音作りを絞り込んでいると言うか・・・上手く言えませんが、音を重ねたり、速弾きだとか、豊富な機材とか、そう言う技術先行ではない音世界を形成しているように私は感じました。自分達の理想と、必要な手段を良く把握している職人達だと思います。

アルバムと同名のI Inside the Old Year Dyingも凄く良かったです。声の加工の効果が良いし、単純なアコースティックギターが主体の演奏ながら、静かな迫力があります。短くも良く纏まっています。A Child`s Question,Augustも素晴らしかった。良い意味で地味な曲だけれど、特にさびの部分の歌声にとても情感が籠っています。全体的に、最新アルバムの曲がどれも素晴らしかった。ライブを聴いた後でアルバムを聴き直せば、この思い出を重ねてきっと評価を改めると思います。最近のアルバムを聴き込んでいなかったのと、予習をしっかりしていなかったのもあって、新しい曲があまり分かりませんでした。しかし先入観無しで聴けたので、真っ新な気持ちで曲を受け入れられて、逆に良かったかもしれません。

9曲目のA Noiseless Noiseはジェームス・ジョンストンが見事なバイオリンの腕前を披露してくれました。他の国の会場では、この曲が入っていない所もあります。観れて良かったです。デウスやダーティ・スリー(Dirty Three)のように、自前でバイオリン弾きがいるバンドは良いですね!

10曲目のThe Colour of the Earthは、PJハーヴェイを除いた男衆四人が横一線に並び、にこりともせず淡々と演奏する姿がちょっと面白かったです。四人とも良い年の取り方をしており、皆男前でなので眼福でした。ライブを通して男性陣のバックボーカルが効果抜群で、大人の色気を感じられます。

13曲目の50ft Queenieは一番盛り上がったと思います。ベースの様な低い、独特で軽快なギター音で始まるのがとても格好良いですね。さすがに若い頃程激しくは動いていませんでしたが、声は相変わらず若々しく生き生きとしており、彼女の声域の広さを確認出来ました。声の変化や使い方が本当に凄い人です。日本人歌手は「ただ高音を出せば良い」と思っている人達が多いですが、PJハーヴェイの歌声は良いお手本になると思います。この後Black Hearted Loveに繋がるのも良かった。どちらも好きな曲なので、感無量。

この辺りで流れががらっと変わり、Let England Shake以前の曲を多く披露してくれました。私が一番好きなアルバムIs This Desire?からThe Gardenを選んでくれたのも嬉しかったです。一つ残念だったのが、White Chalkから一曲も演奏が無かった事。生でThe DevilとかThe Pianoを聴きたかったです。

私は記憶力が良い方ではないし、コード進行とか分からないし、この曲のベースが凄かったとか、技術的な事を全く解説出来ないのが歯痒いですが・・・動画も無いので見返せないし(この記事を書いている最中、大阪ライブの動画をYouTubeで発見しましたが)。ただ最高だったとしか言えません。

バンドの人達は皆いい歳だけど衰えは見えず、年齢相応の落ち着きと静かな貫禄が伝わって来ました。ちょっと気難しそうな人達に見えましたが(気のせい?)時折見せてくれる笑顔が素敵でした。派手な立ち居振る舞いは無くとも、丁寧で確実な演奏は説得力があり。緊張感を漂わせつつも、どこか肩の力を抜いたゆったりとした演奏にも思え、長年の経験の積み重ねで至った境地のようなものが見えました。会場全体の雰囲気も良く、聴衆は皆静かに傾聴し、ゆったりと心地良く音楽に酔い痴れているようでした。音で繋がる一体感。素敵です。

最後にPJハーヴェイが短く、今回のライブについて語ってくれました。彼女の英語の発音はとても綺麗で、よく聞き取れました。確か彼女が喋ったのは最後の曲To Bring You My Loveの時と、アンコール曲のHorses in My Dreamsの後の二回だけだったと思います。五人揃ってお辞儀を二回してくれました。いつもそうなのかもしれませんが、このライブ中は合間に一切会話を挟まず、淡々と演奏に集中しているようでした。その分、沢山曲が詰め込まれて非常に濃密で、1時間30分のライブが私には2時間ぐらいに感じました。

彼女は舞台衣装について何か言っていましたが、ここは聞き逃してしまいました。彼女は久しぶりに日本で講演出来た事を喜んでおり、ツアーの締め括りはどうやら大阪のようでした。長く続いたツアーの終点が日本の大阪。そこに私が幸運にも立ち会えた事を嬉しく思います。正に大団円でした。

ところで最近まで全く知りませんでしたが、PJハーヴェイと関りがあったスティーヴ・アルビニ(Steve Albini)が亡くなっていました。色々物議を醸した人のようですが、私もシェラック(Shellac)の音楽は興味本位で聴いた事があります。随分前の話で、その時は良さが分からなかったですが・・・アルビニと言えば、ベルギーバンドのデッド・マン・レイ(Dead Man Ray)のアルバムCagoのプロデューサーもやっていました。Cagoは渋いけれど、映画を一本観ているような気分になれる(人の息遣いを感じたり、映画の一場面の様な臨場感がある)アルバムでお勧めです。一聴しただけではその良さに気付けない名盤です。アルビニ本人の音楽は、またいつか近い内に聴いてみたいと思います。

PJハーヴェイの来日は8年ぶりと言う事ですが、彼女の年齢(1969年生まれ、現在55歳)を考えると、今回が最後になってもおかしくないでしょう。今後は自分が好きなバンドのライブは「二度と来ない」と言う危機感を持ち、機会を逃さず確実に参加していきたいです。PJハーヴェイ以外の女性歌手で言えば、ポーティスヘッド(Portishead)ゴールドフラップ(Goldfrapp)が観れたら思い残す事はありません。まあ、この人達の来日は難しいかな・・・

ライブの後のお楽しみ

ライブ終了後、余韻の熱を屋外の夜気で覚ましながら、人の流れを足早に抜けました。観るものは観たから、ライブの余韻に浸りながら酒だ!事前に調べていた店へ向かうべくホテルへ急ぎ戻り、身支度を整えて受付へ。私は地元のタクシーをよく知らないので、受付の人へ聞いたところ快く電話を繋いで手配してくれました。感謝感謝。自分でも調べたのですが、どのタクシー会社も評判が芳しくなかったので。なので、ホテルで情報を控えているタクシー会社を利用しようと思った訳です。私の地元でも運転が極めて荒かったり、およそ人の命を預かる仕事と理解していない悪質な運転手が多いので。座って車を走らせるだけの楽な仕事、と勘違いしている馬鹿が多いのが運転業務です。むしろ、高い運転技術や集中力の維持、体力、判断力、機転、土地勘、交通法規の理解と倫理観など、求められる能力は多岐に渡り、誰でも出来る仕事ではありません。

行きに利用したのが南大阪第一交通株式会社のタクシー。歩いて行ける程度の距離ではあったものの、時は金なりとも言います。代金は安く済みそうだったため、普段は贅沢と思って利用しないタクシーに乗りました。運転手はまだ余り経験が無いのか、住所を伝えてもすぐに場所を特定出来ないようだったので、こちらの携帯電話でも調べて協力しました。

程無くして目当ての店に到着。初めての店の扉を潜る時は、いつも期待でどきどきします。店に入ると先客が一人と、店主と思しき人がカウンターの向こう側に。店内は程良く狭くて暗く、しかし雰囲気は良さそうでした。空腹に酒を入れるのは良くないので、先ずは腹ごしらえ。予定ではこのお店で(以下X店)で食事が出来る筈でした。しかし誤算がありました。私が収集していた情報に誤りがあり、どうやら本当に軽い摘みしか提供出来ないとの事でした。もうすっかり飲む気になっていたので店を移動するのが億劫で、空きっ腹にも関わらず酒を飲む事に決めました。今となっては、美味い粉物でも食べに行けば良かったと思います。

店主は私より若い人でしたが、関西人らしくよく喋り、気さくに話しかけてくれました。バーに入るといつも最初の一杯はカクテル。渇きを癒す為、先ずはジントニックを。そして久しぶりにコロナ・エキストラを飲みながら、次は何を飲もうかと店の棚を物色しました。本格的なバーではなく、下町のバー?みたいな趣の店でした。後で気付いたのですが、コロナビールはメキシコではなく、中国製造に変わってしまったようです。どうりで味が違う訳だ・・・私が飲みたいのはこの味じゃない!

途中で店主と少し政治の話が始まりましたが、私は酒の席ではあまり政治の話をしたくないので、会話を発展させず自然に終息しました。願わくば、維新には騙されませんように・・・

久しぶりにグレンモーレンジを飲みました。最後に飲んだのがもう何年も前で、その時は10年物だったけれど、このお店で飲んだのは12年。ショットで二杯いただきました。記憶している10年より美味しく感じられたので、近い内に12年を買ってみます。

店主は白いシャツにネクタイ、ベスト着用ではなく、自由でくだけた格好でした。しかし、流石に酒を飲ます事を生業にしているだけあって、手元の動きや、提供する時の作法等、良かったと思います。私は酒を飲むと口が達者になって、いらぬ事をたまに喋ってしまう事があります。もしこの夜に、偉そうな講釈を垂れていたならすいません。

モルトの合間にシャンディガフやソルティドッグを挟みつつ、アラン・バレルリザーヴも二杯いただきました。アランは三年以上前に飲んだ10年物が良かったですが、これも良い味でした。こちらも自分で買ってよく味わってみたいと思います。

最初は客が少ないと思いましたが、夜が更けるにつれてどんどん客が増えてきました。皆常連の様な人達でした。常連客達との会話は猥談が多めでしたが、私は聞き流す力があるので苦になりませんでした。何処ぞの増税眼鏡とは別物ですが。店主は酒を注ぐ時、計量カップを使わず目分量。しかも、本格的なバーではあり得ないですが、客と一緒に飲んでいたのが面白かったです。私はそう言うのは全く気にせず歓迎ですが、まるでアメリカ的なバーの趣があると思います(私は行った事ないですが、映画だとたまに見る光景)。

入店した時は21時を回っていたと思いますが、店を発ったのが2時過ぎだったと思います。確実に四時間以上は飲み続けていました。多分これまでで、一つの店で飲んだ最長時間を記録したと思います。それぐらい、X店は居心地が良かったです。確かメニュー表にちゃんと「チャージ料いただきます」みたいな表示があって、明瞭会計でした。

店主が大阪には他にもっと良い会場があるのに、何で住之江なんだろう?と疑問を口にしていました。確かに、地元の人も認めるぐらいここには何も無い印象でした。ライブでも無ければ一生来なかったと思いますが、もしここに再訪する事があれば、またこのお店に来たいと思います。気軽に来られる距離なら、通いたいと思えるぐらい楽しい一時でした。本当はライブの余韻に浸る筈でしたが、未開の土地で楽しく他者と交流する事で、人情とか温かさを得られたのは幸せだと思います。

X店の前は頻繁にタクシーが往来するので、捕まえるのに苦労しませんでした。明るい笑顔で見送られ、気持ち良く店を出ました。帰りのタクシーは日本交通株式会社。ここから先の記憶が殆どありませんが、ホテルでちゃんとシャワーを浴びて髪を乾かし、最終的に床に入ったのが午前四時ぐらいだったと思います。我ながら体力がある。

現実への帰還

就寝が遅かったものの、休みの日でも日課を崩したくない私は、気合いを放出して床を抜け出す事に成功しました。普段は休日でも7時前後に起きますが、この日は30分程延長したのみ。朝食は適当に近くの商店で買い求め、暖かい珈琲と一緒に味わいました。購入したのはおにぎりでしたが、やはり高い。米の値段が高いのは、相変わらず米を作っていないからですよ皆さん。米の自給率を、それこそ150%でも200%でもいいから、伸ばすだけの話なのにね。

簡単な朝食が終わるとホテルへ戻り、チェックアウトまで少し時間潰し。パソコンを弄りつつ、荷物の片づけを徐々に済ませました。旅の終わりはいつも、忘れ物をしていないか神経質になります。何度も確認をして退室し、受付で手続きを済ませ、ホテルの人に軽く礼をして地上へ下りました。この日も電車を逃さないように、余裕を持って出立しました。元来た道を辿り、新大阪まで。

一時間以上余裕を作れるように出て来たので、初日と同じく電車を待つ間、喫茶店で珈琲を飲みながら一服。お茶を楽しみつつ読書するのは至福の一時。その時不意に横の客の荷物が目に入り、お土産を買い忘れていた事に気付きました。これはいかんと慌てて席を立ちました。会計で並んでいた先客が携帯電話で支払いをしており、やたらと手間取っていました。だから現金の方が速いのに!デジタルの方が逆に時間がかかるとか、本当に馬鹿だと思います。今問題となっている大阪万博は会場内で現金を使えないんですって!本当に馬鹿。私は現金とクレジットカード以外では支払いしないし、マイナンバーカードみたいな塵は勿論取得していません!土産物屋に入ると、箱が嵩張らず平ぺったくて、中身が多いお菓子を選びました。配る人数が多いと必然的に「安価で量が多く、荷物にならない」が必須になってきます。徒歩と交通機関による旅は、荷物制限があって困ります。

無能なJRと、頭の悪いスマートEX

無事土産物を調達すると、残り時間が少なくなっており、少し焦りました。何故なら、新大阪の駅は人の波に飲まれ、発券にかなり時間がかかりそうな見通しだったからです。見出しの通り、前述した通り、スマートEXには、本当に悩まされました

今回の旅で、実に約二十年ぶりに新幹線に乗りました。最後に乗車した時の事をよく覚えていませんが、その頃はまだ、何でもデジタル処理みたいな時代ではありませんでした。現在は何でもデジタルで、どんどん複雑化して逆に利便性が低下しています。例えば、病院のカルテを全て電子化してしまえば、身代金型ウイルスにやられた時に診療が崩壊します。結局のところ、紙のカルテも残すしかありません。最終的に一番頼りになるのは、アナログな手段ですよ。

もう一月経過してしまったのでうろ覚えですが、スマートEXが通信不良(混雑が原因と思われる)でログインに4~5分ぐらいかかったり、ワンタイムパスワードの発行やQRコードの読み取り等、手順がかなり面倒でした。また、発券端末のQRコードの読み取りも悪かったと思います。そんな面倒な事をせずとも、例えばIDに加えて、暗証番号の入力だけで発券出来るようにすればいいのに。それかQRコードと手入力二つの手段を、どちらか一方を客が選択出来るようにするとか。何にしても、デジタルはシステム障害が起きたら終わりです。つい最近、ETCの不具合で大騒ぎしてましたよね。本っ当に馬鹿!!

また、予約済み専用の端末でも設置してくれれば、新規購入客と住み分けが出来て便利なのに、一緒くたになっているので大変混雑していました。JRの駅員は混雑の対応に右往左往して、客に対して自分の苛々が露骨に分かる態度でした。自分達の不始末なのに、客にそんな不便をかけるのが、税金を大量に投入してインフラ整備した見返りなのか。阿保過ぎます。これが民営化の成れの果てです。誰も必要としていない、害悪そのもののリニアを未だに作り続けているし・・・その内に、リニアの件もぼっこぼこに叩いてやりたいと思います。既に作業員の犠牲、沢の枯渇、地盤沈下、浸水等深刻な問題が起きています。

それから気になったのが、携帯電話を持っていない人は、どうやって切符を発券するのでしょう?携帯電話の普及率は極めて高いけれど、それでも中には所持していない人がいると思います。多分窓口で対応してくれるとは思いますが、自分達の独善を客に押し付けないでくれ。

もう一つ、自分が乗る電車がどのホームに入るのか分かり辛い。多分新幹線は空いたホームに入るようになっているので、何番とか決まっていないと思います。私の見方が悪かったかもしれませんが、電光掲示板に表示が無かったような・・・構内はごちゃごちゃとして色々見辛いし、数少ない駅員を探し、直接聞いて確認しました。若しかしたら、スマートEXの画面で発着ホームを確認出来たかもしれませんが、経験不足でそこまで頭が回りませんでした。地方の鉄道でも構内や車内は広告をべたべた貼っており、肝心の運行に関する情報が分かり辛かったり、乏しかったりします。一番大事なのは、列車の情報でしょう。

最後に

少しあたふたとしましたが無事新幹線に乗れて、地元へ帰り着きました。駅を出たら相変わらず酒飲みらしく、ラーメンを食べつつ酒を飲んで・・・いつもの日常へ。毎日くたくたになる福祉の仕事、たまに政治活動の参加、細やかな趣味の時間。それの繰り返し。人生は楽しみがあるから頑張れる。ライブの後、会場を出る前に貰った散らしを棚に飾って拝んでいます。

その後の数日間は冷静なようで受けた感動の余波は大きく、仕事をしている時もどこか呆けて、ライブの反芻の連続。暫くは夢現の中にいました。一月経って今ようやく、夢から覚めてきたと思います。最近は怠けてブログを中々更新しなかったので、これから平日も頑張って遅れを取り戻して行きたいと思います。夏の参院選に向けて、れいわ新選組の応援にも力を入れて。

音楽はやっぱり良いですね。精神的に余裕が無くて、一時音楽を全く楽しめず遠ざかっていた時期がありましたが、どうにか立ち直って音楽を聴き続けてきて良かったと思います。いずれ手持ちのCDの中から、お勧めの名盤の紹介などしたいと思います。

記事公開 2025年4月21日

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