初めに
2024/9/5開封、価格は2,360円。度数45.2度、容量750ml。産地はスコットランド、蒸留所はよく分かりませんが、手広く酒を取り扱っているProximo Spiritsと言う会社の商品のようです。去年静岡のバーでカクテルの材料として使われているのを目にし、気になっていたので購入しました。
100%グレーンスピリッツ(小麦と思われる)にジュニパーベリー等7種類の材料が使われていますが、柑橘系の素材は使用していないそうです。
色・香り、味わい
色は無色透明。澄んだジュニパーの香りがします。瓶・ラベルのデザインはとても地味。味わいも飾り気無く率直な感じです。海外情報だとスピリッツは小麦。使用されている材料はアンジェリカ、カシア、キャラウェイ、コリアンダー、ジュニパー、ナツメグ、ローズマリーで全七種類。
材料から分かる通り、香草系とジュニパーが主体のジンです。柑橘系の素材が無い分、ジュニパーの濃厚な森の香り、甘さが活きています。柑橘系も良いが、使い方を誤ると自己主張が強くなるので。最初の印象はあっさりし過ぎな感じで、もう少し複雑な味わいが欲しいと感じました。暫く飲み続け夜も更けた頃、深緑とか湖水を思わせる、深い味わいを感じられるようになりました。後日残りが半分程になった頃、真価が発揮されてきた気がします。苦みはあるが控えめで香しいジュニパー、程良い甘さが香草と相まって、凛々しく引き締まっていると思います。
海外サイトだと「柑橘系素材が不在であるが、柑橘を感じる」と言うような記述がいくらか見られましたが、確かに不思議と少し檸檬のような風味が感じられるかもしれません。ほんの僅かだけれど。価格帯では私が好きなロンドンヒルが競合ですが、私はロンドンヒルの方が好みかな・・・と思いましたが、甲乙つけ難いかもしれません。
私が子供の頃、近所に畑や小さい溜池のある広大な土地を有した民家がありました。当時は、平気で子供達が人の土地に無断で侵入し遊んでいました(今考えるとすごい事をしていた)。池や水路で蝲蛄(ざりがに)を捕ったりして遊んだものです。池の水はどこから来たのか不明ですが、若しかしたら地下水だったかも。付近に生活排水らしき汚水が流れている側溝がありましたが、それとは違って池は良い匂いがしていました。
畑には水路があって、それが別の民家の生垣に並行して通る水路へと通じ、少し日当たりが悪く薄暗いトンネルのようになっていました。子供の小さな体なら容易に侵入出来るそこは、落ち着いた水草とか緑の香りに満ちていて、そこでもたまに蝲蛄を見つける事が出来ました。テレビゲームのRPGに出てくるような場所で、冒険が大好きな子供には良い遊び場でした。近くに防火水槽もあり、金網の上を渡るのも楽しい遊びでした。今は過保護が行き届いているので、水槽は蓋が閉じられています。ジュニパーの香りは、その水路の記憶を度々呼び起こしてくれます。
沢山の思い出があるその民家は、最近になって日照権を無視した建売の住宅地に変わってしまいました。とても悲しい。私が子供の頃、危ない悪戯をしていると近所の名前も顔もよく知らないおばちゃんが叱りに来たものだが、今ではそのような光景は見られなくなりました。私が子供の頃は空き地が多く、その分飛蝗など虫達が沢山いました。雨上がりのアスファルトには、水黽(あめんぼ)が波紋を立てながら泳ぐ姿も見れたものです。今はもう見られない。燕も飛ばず、蝸牛や蛭とか、蓑虫もどこかへ消えてしまった。私の父が若い頃、実家の周辺まで鰻が遡上したり、松茸が履いて捨てる程採れたと言います。この喪失感はどう埋めればよいのでしょう。
しつこい蚊に悩まされながら、蚊取り線香を焚いて撮影していると(効いているとは思えないが)、幼い頃の記憶が自然と蘇ってきました。私が小学生の頃に電子蚊取りが登場しましたが、それまではもっぱら蚊取り線香が虫除けに使われていました。蚊取り線香は蝋燭と共に、花火の種火として重宝しました。夏の風呂上がりと言えば、どこからか漂ってくる蚊取り線香の匂い。古き良き昭和、平成初期でした。子供の頃は良い匂いと思いましたが、成分のピレスロイドは化合物なので今は苦手です。私が幼い頃、本当に暑い日しかエアコンは使われず、基本的に贅沢品でした。暑くて寝苦しい夜は、母が団扇を扇いでくれたのをよく覚えています。今は9月に入ってもエアコンが無いと生活出来ない。大変な世の中になったと思います。
閑話休題。私なら少し高くても、ビーフィーターやゴードンよりこちらを選びます。酒屋に置いてある定番ジンのタンカレーやボンベイサファイアが、最近凄い値上がりしています。煙草の税金が上がった時、安いからと言って「わかば」に走った人達は本当に満足したか?安かろう悪かろうより、投資してより良い物を。自分の所得に見合った物で。と言うのが私の信条です。飲み始めこそ平凡に感じられたものの、後半はどんどん美味くなっていったと思います。単純・率直、とても爽やかで飽きが来ないジンです。
ジントニック
フィーバーツリーのメディトレニアン割りは、ほんのりと苦みや清涼感があり、すっきりとした甘さがあり美味しい。
エルダーフラワー割りだと桃だろうか?果実的な甘さと華やかな香り、丸みがあり飲み易い。どことなく、駄菓子のような風味にも感じられます。私はこちらの方が好みでした。変な癖が無いジンなので、カクテルの材料として万能かもしれません。
最後に
とても良かったので、約二月後に二本目を購入しました。苦みから始まって、濃厚なジュニパーの香しさと甘さ。嫌味の無い辛口の締め。申し分ない。無骨な外観で中身も率直、飾り気無い真っ正直なジンだと再確認しました。ストレートで飲んで良し、カクテルの材料にしても良し。変な癖が無いので良いマティーニが作れます。頗る良い商品でした。
記事公開 2024年12月7日