初めに
私はこれまで音楽を聴く際はヘッドホン一筋でした。何故なら、ヘッドホンは外部の騒音や生活音を遮断することで静寂を確保し、真に音源と向き合えます。そして多少の音漏れであれば近隣住民への迷惑もありません。深夜・早朝を問わず音楽を楽しむ事が出来ます。
それでも、スピーカーが存在する空間に身を置くというのは、音楽好きにとって何か惹き付けるものがあるのは事実。食わず嫌いをしない性分としては、一度は試してみようと常々思っていました。ヘッドホンが外界との接続を遮断して音楽に没頭できる媒体であるのならば、スピーカーは音楽のある豊かな空間を創造して楽しむものだと思っています。ただ酒を飲むなら家飲みでもいいのですが、わざわざ高い金を払ってバーに行くことに似ているかもしれません。音響に凝り始めてから10年近く経った今、ようやく新たな世界への扉を開きました。
内容物、外観
2021/8/19にフジヤエービックで188,100円で購入しました。丁度、原材料費の高騰などの理由で1~2万円ほど値上がりした時期で、もっと早く買っておけばと後悔しました。梱包は必要最低限で、外箱などに特別凝ったものや高級感などはありません。
ターミナルは旗艦商品であるEPICONと同じ物をあてがっているようです。通常のMENUETは銘板がシールのようですが、SEは真鍮製となっています。こういう気遣いは有り難いです。最も、通常版とは比較にならないほど値段が高いので、きっちり差別化を図って欲しいのは当然の感情ですが。
左肩にはMade In Denmarkの文字が確認できます。私のシリアルナンバー?は1874で、検査をした人のイニシャルでしょうか、HBとという文字の記載があります。
本体の外観は個体差があるかもしれませんが、ネット上の画像と比較すると暗い色合いに見えます。ハイグロスの仕上げがたいへん美しいですね。木目とハイグロス処理がとても目を引きます。ところで、本体に埃が付きやすいのがとても気になりました。しっかりと付着して掃除してもなかなかに除去し辛いです。私はこれまでスピーカーを使ったことが無いので常識が分かりませんが、こんなものなのでしょうか?本体が帯電でもしてるのですかね。下の画像でも埃がはっきりと確認できますが、見苦しくてすいません。
使用環境
これを購入した時点での使用環境については以前書いた「Fostexの記事」と大きく変わりないですが、前回触れなかった事などを少し載せておきます。
私の住んでいる家は築40年以上で、伝統的な日本家屋だと思います。私室の広さは6畳で壁は今どき塗り壁、床はずいぶん前ですが床板が張り替えられ硬くしっかりとしています。軋んだりしません。周りには棚やベッドなどが置いてあります。部屋の東側の中心にラックを設置しております。
プリメインアンプはORBのJADE Soleilを使っています。これは一つ前の型になります。新品が安売りしていた事と、真空管アンプに興味があったので何となく買った物で、長らく使用しないまま置物と化していました。同社のJADE-2 LTDのヘッドホンアンプと比較して、価格差もありますが、性能が数段落ちるので出番がありませんでした。音量の摘まみはこの色だけ、真鍮が使われています。新品の内は金色で綺麗ですが、経年で色がくすんできます。本体色はMidnight Purpleが示す取り、深い夜を思わせるような綺麗だけれど落ち着いた安らぎを覚える色となっています。これとCD再生機をRCA-AKIHABARAで繋ぎ、スピーカーをINNOVA TS7(バナナプラグ)で繋いでいます。どちらも同じORBの製品です。
私の知る限りORBは全て日本製で、どの製品もたいへん丁寧に作られています。画像からは伝わり辛いかもしれませんが、AKIHABARAのプラグは宝飾用の銀メッキが施されています。普通の銀色ではなく少し黒みがかった色で、とても綺麗で高級感があります。以前はoyaideのACROSS750を使っていましたが、これに変えた後はっきりと音質向上を実感できました。音量の摘まみが同じ位置でも、伝わって来る音の圧力が明らかに大きく、解像度も向上しました。またACROSS750の電線は硬くて取り回しが悪いのに対し、これは線が細く柔らかいのでとても扱いやすいです。買って良かったと思います。この記事を書いている時点で終売していますが、どこかで新品在庫が残っていたら興味のある方は購入してはどうでしょうか。
音質、性能面
肝心な音の性能ですが、まず最初に公式からの諸元表を以下に載せておきます。
希望小売価格(税込) | ¥220,000(ペア税込) |
カラー | ワイルド・ウォルナット・ハイグロスフィニッシュ |
周波数特性(±3dB) | 59~25kHz |
感度(2.83V/1m) | 86dB |
インピーダンス | 4Ω |
推奨アンプ出力 | 20~100W |
クロスオーバー周波数 | 3,000Hz(2WAY) |
ツィーター | 28mm ソフトドーム |
ミッドレンジ/ウーハー | 115mmローロス・ウッド・ファイバーコーン |
エンクロージャー・タイプ | バスレフ型 |
ターミナル | シングル |
外径寸法 | 250mm x 150mm x 230mm |
本体重量 | 4kg |
付属品 | グリル、ラバーフット |
最初はインシュレーターを使わず、ラックの上に直に置いて試験してみました。歯切れが良く、音の輪郭がはっきり(高解像度)しているように聴こえました。女性の歌声には艶が乗っています。低音はしっかりどこどこ出てきますが、ぼわぼわとした音鳴りがしました。低音の量感がある分、高音は不足していると思いました。量感の不足と伸び悩みがあり、綺麗で澄んだ音は出ていないように思えました。このスピーカーに限らず、低音・中音域の音が良くても、高音がしっかり出ない機材は多いように感じます。また、音の分離はあまり良くないと感じました。一つ一つの音の再現は良いものの、それが少しごちゃごちゃしていると言いますか、秩序が不足しています。
一月半ほど様子を見てから、インシュレーターを調達することにしました。まずは安価で定番なところからoyaideのINS-SPとINS-USを購入。スピーカー正面から見ると▼の3点支持で配置しました。
そうしたら低音のぼわぼわとした感じが鳴りを潜め、高音の音質が向上したように思えました。よーく聴いてみると違いが分かりました。2割り増しぐらいに音が良くなったと思います。シンバルの音で気づきました。しゃりしゃり、ちっちっ、しゃんという叩き方による音の違いが明確になり、金属の質感がよく伝わって来るなど解像度が上がったと思います。高音の量が増したと言うより、無駄な低音が抑えられ、結果として高音が少し前に出て来たのではないかと予想しています。インシュレーターが金属製なので、高音が硬くなったのかもしれません。何にせよ、高音域の質が上がったので僥倖です。
音量の摘みは12時か1時くらいが限界で(近所迷惑になるので)、出来ればもっと大きい音で聴いてみたいですが。摘まみを上げていっても、無理なくしっかりと音出しが出来ています。
私がここ2年ほど主に聴いているのは、ポーキュパイン・ツリー(Porcupine Tree)とスティーブン・ウィルソン(Steven Wilson)の個人名義の音楽です。彼の音楽はとにかく幅が広く色んな要素があるので、様々な音を聴き比べるのに最適かと思います。この世で、彼以上の音楽を作れる者は存在しないでしょう。私はそう信じています。ちなみにPink Floydには全く興味がありません。喧嘩を売るようですが、Pink Floydは嫌いではないですが、同バンドの信者は嫌いです。
ついでに余談ですが私がいつも首をかしげるのは、巷でヘッドホンやスピーカーの評価に使われる音楽が、常にクラシックやジャズ、アニメ音楽にほぼ限定されている件です。音響機器はクラシックやジャズだけを鳴らすために設計されている訳ではありません。また、〇〇向けという評価も、評価する人がジャズ好きならジャズを最適に鳴らす為に(自分好みに)環境整備しているはずなので、「このスピーカーはジャズを鳴らすのに最適」などといった評価は的外れに感じます。建材や部屋の面積や間取り、アンプや再生機など組み合わせは無限ですから。ただ使用機材と設置環境、事実だけを伝えてくれればいいです。
また、アニメ音楽を聴くのは大変結構ですが、私はあれを文化とは認めていません。アニメの娯楽としての地位の定着と経済的効果は認めますが、あれを本物の音楽・文化とは同列に並べたくないので。お金をかけて高級機を揃えて、配置を何度も修正する努力を向けるべき対象とは到底思えません。こう言う事を書くと、趣味は人それぞれで勝手だろと食って掛かられそうですが。誤解が無いように言っておくと、私は漫画もアニメも好きです。
最後に
分かっていたことですが、近隣住民に配慮して使用する時間が限られているのと、読書や作業に集中している時は音を一切排除したい性格なので、使用頻度は今のところ低いです。
また、スピーカーを初めて試聴と言う事でスピーカーやアンプの性能の比較や、果たして音質が本当に優れているのかいないのか、断定することが難しい事情があります。あまり詳細な解説が出来なかったので、時間をかけてスピーカーと付き合って、追記していけたらと思います。今後、アンプをsoulnoteの物に替えたり、oyaideの他のインシュレーターを購入して比較などをやれたらと計画しています。