初めに
2025/11/15開封、価格は8,250円。度数50.0度、容量700ml。産地はアイルランド、ウォーターフォード蒸留所の商品です。同蒸溜所は、アイルランド南西部にあったギネスビールの醸造所を買収・改修し、2014年に創業開始しました。ウォーターフォードの最大の特徴は、ワインの味わいの概念として知られる、テロワールを最重要視しているところにあります。

ザ・キュヴェはウォーターフォードの旗艦的商品で、アイルランド産大麦100%を原料に、ポットスティルによる2回蒸留で作られます。熟成樽はファーストフィルバーボン樽、アメリカンオークの新樽、フレンチオーク樽、ヴァン・ド・ナチュール樽(以下VDN樽)の4種類が使用されています。それらの原酒をブレンドし、熟成年数は3~5年程度です。
色・香り、味わい
この酒を開けた頃、オーペスのライブ(別記事有り)まで残り二週間を切りました。ウィスキーでは馴染みの無いテロワールの概念を取り入れ、ウィスキーらしからぬ瓶のデザインが前から気になっていました。ラベルがボジョレーみたいですね。ぱっと見た感じ、ワインの瓶のようです。この辺りは意識しているかも。目の覚める様な鮮やかな青い色の外箱。ラベルにはホログラム。瓶は美しい青紫でセンスが良い。栓は硝子とシリコンを組み合わせた物が使われています。これを抜くのに結構力が要るので、勢い余って零さないよう注意。毎回かなり力が要ります。まだ創業から十年と少しなので、年数物が出来ていません。前述したVDN樽は、酒精強化ワインの樽と思われます。
色は明るい黄金。香りは、パンの発酵や果実を思わせる香りがあります。宣伝に「新鮮な乾いた土」や「ラベンダー」とあるように、確かに土の香り・花の香りを感じるかもしれません。私の嗅覚では、むしろ濡れた土と言う印象でしたが。他に焼き菓子の様な甘い香りがします。焼き立ての何かの様な香ばしさ。香りから塩っ気も感じ、大袈裟に言えば、焼き玉蜀黍の様な香ばしさがあるでしょうか。どちらかと言えば、上品な香りよりも野性的な感じがします。印象として、香ばしさが一番強い。香りが独特にして複雑で、実に興味深いです。


味わいに「オイリー」とあるように、確かに舌に滑りを感じます。味わいでもパンの様な発酵感や、穀物の旨味や香りを感じます。宣伝の「グラノーラバー」とはこの事でしょう。飲んですぐに香辛料の刺激が現れ、余韻まで長く続きます。また、同時に塩分が結構強めに現れ、これも長く続きます。まるで塩分を添加した様に、かなり塩っ気が強いと思います。最初の一・二杯目は特にそんな感じでした。消費が進むと、この塩分は減退しました。
穀物を使った料理の様な味わいにも感じられました。この感じは非常に珍しい。中間から締めにかけて柑橘の味わいも出て来ます。柑橘の青臭さや、いくばくか皮の苦みもあるでしょう。立ち上がりと中間までは味わいがはっきりするが、締めと余韻は驚く程素早く消えて行きます。唯一香辛料の刺激だけが長く残り、他は後味が殆ど無い印象です。


熟成が3~5年とありますが、実際に飲んだ感じはその通りだと思います。やはりまだまだ若い印象。度数は高めだが、数値よりもきつく感じない。オーク系の樽が多く使われていますが、VDN樽由来のワインを感じさせる風味も出ていると思います。香りと同様、味覚でも香ばしさが一番印象に残ると思います。この香ばしさは、間違いなく穀物由来のものでしょう。ここまで穀物の味わいと香りを率直に感じさせるウィスキーは、非常に珍しいと思います。
普段は余りやりませんが、気紛れでロックでも飲みました。モービーのWait For Meを聴きながら酒を楽しみました。私が持っているのはCD二枚とDVD一枚合わせて三枚組の商品で、これが以前は千円程度で買えました。今は輸入盤が3,000円~4,000円もするので驚きです・・・ロックにしても香ばしさは健在で、氷負けしない。氷がある程度解けると、甘さが増しました。氷が解けても、原酒の濃厚さを毀損しませんでした。たまにはロックも悪くない。
最後に
熟成3~5年物と考えるとかなり高い価格設定ですが、品質はまずまずと言ったところ。記念に一度買う分には面白い商品ですが、若し機会があればバーで試しに飲んだ方が良いでしょう。これを置いているバーを見た事がありませんが・・・若さ故の勢いと、蒸留所の個性が生きた非常に力強い酒だと思います。私はこの蒸留所の実験精神や意欲を、好意的に感じました。これで年数物が登場して価格がある程度抑えられたら、頭角を現すと思います。
記事公開 2025年12月31日


