酒と人生、バー通い 其の三

  • 2022-06-26
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2022/6/25。小雨が降る仲、美味い酒を探求すべくいつものバーへと足を運びました。行くか行くまいか悩んでいたけれども、雨雲レーダーを確認したところ大雨は降りそうになく、傘を持たずとも行けそうな感じだったので出かけることに決めました。

コロナの勢力が衰えてきたせいか、マスクを着用していない人達が少なからず確認出来ました。こうも暑いとマスクを着けるのは不快でしかないので、人が密集する場所でなければ外せばいいと思います。政府方針として明確にマスク着用の義務化がされていなくても、日本は同調圧力によって着けないと許されない雰囲気になるのでしょうが。

いつも周りに田圃が広がった交通量が少ない道を通って、市街の方へ歩いて行きます。この道は競技場が建設されることで交通量が増えるのを当て込んで造成されましたが、結果として車どおりは全く増えませんでした。無駄に歩行者と自転車の分離がされたり、中央分離帯などが作られ贅を凝らしてますが、無意味です。競技場とそれに隣接する使い勝手の悪い橋など、無駄に税金が投入され、市民として憤りを感じています。

造成された道はともかく、田圃を抜ける農道周辺の光景は子供の頃からあまり姿が変わっておらず、何か安心感があります。しとしと雨が降る中、蛙や水鳥の鳴き声が耳に心地よく、取り留めのない思考に漂いながら歩くと、行き帰りの少し長い道のりも苦になりません。

駅近くのラーメン屋で豚骨ラーメンと生ビールを食し、替え玉も頼んで胃の中を満たしてからA店へと赴きました。

店に入ると以前よりお客さんの数が多い。数か月前に初めて利用し、一度会ったきりなのにA店主はすぐに私だと気付いてくれて、さすが客商売をしている人は違うと思いました。

このお店は店主が自分でトニックウォーターを作ったり、色々と意欲的なことをしているようです。オリジナルカクテルが豊富にあり、積極的に展開しているのですが、私は王道カクテルが好きで(そもそもカクテルはビールと同じで最初の一杯で頼む程度)個人の創作カクテルには全く興味がありません。オリジナルカクテルを全く頼まないのを少しだけ申し訳なさを感じながらも、自分に正直に自分が飲みたい物だけを頼みます。

いつも果物を当てとして出してくれるのに嬉しさを感じつつ、まずはジントニックを注文。柑橘の輪切りを浮かべ、仕上げとしてさらに柑橘を優雅に絞って提供してくれました。柑橘の種類について説明をしてくれたのですが、店主は少し早口なので不明瞭で聴き取れず、適当に相槌を打ってしまいました。最初は「ペペス」と聞こえたのですが、後で調べたところ宮崎県原産の「へべす」のようでした。へべすの香りや苦味がよく表れていますが、個人的にはもう少し柑橘系の香味は後退してくれた方が嬉しかったです。

2杯目は店主がお勧めしてくれたジンをいただきました。グレンリネス蒸留所エイトランズ・オーガニックジンです。店主のYさんは、本当に酒に関する知識が豊富で、何を尋ねてもほぼ答えが返って来る凄い人です。これまでずっとジンを好んで飲んできましたが、どうしてか基となるスピリッツについて全く気にかけてこなかったので、いい機会だと思い聞いてみました。

Yさんによると、ジンのスピリッツの素材はとうもろこしや糖蜜(廃蜜?)が多く使われているようです。安価であるのが理由の一つです。安い葡萄を使うこともあるようです。アバディス蒸留所やM・シャプティエなど、上質な葡萄からスピリッツを作っている所もあります。小麦や葡萄をスピリッツの原料として使う場合、少し高くつくようです。ウィスキーの蒸留所の場合、小麦を基としてジンのスピリッツを作るのであれば、本来ウィスキーに回す原料を使うのですから、ウィスキーの原酒ができるまで(スコッチなら最低3年熟成させないと「リキュール」扱いになる)の資金稼ぎとしては割に合うとは言えないようです。

それからジンを作っている蒸留所(特にクラフトジン)はスピリッツを自社生産ではなく、他から購入している所が多いという話は意外でした。どこもスピリッツは自社で作っていると思い込んでいたので、少し驚きました。また、原材料のとうもろこしなども輸入に頼る場合があるようです。ここで気になるのは、例えばアメリカからスピリッツ製造用としてとうもろこしを輸入した場合、遺伝子組み換えの可能性がある事です。酒の席でこのような話題を出すのは興が醒めるかと思い、口にはしませんでした。しかしながら、看過できない話題だと思います。

エイトランズのジンはとても美味しかったです。小麦由来のなせる技なのか、味が濃く香り高く感じました。上手く言えませんが、ありそうでない味わいで、スピリッツの質の高さが確かに伝わってきました。これはとても良い発見で、機会が有れば是非とも個人で購入して楽しみたいジンです。

次に飲んだのがまたYさんのお勧めで、仏蘭西のリキュールmidi fauveです。「飲める香水」と言われている代物です。お試しとして20mlで提供してくれました。ラベルがお洒落です。何とも形容し難い不可思議な香りと味で、説明し辛いです。砂糖が添加されており、私には甘すぎると感じました。このリキュールは日本に正規流通しておらず、仲間と一緒に個人輸入したそうです。この行動力は称賛に値します。

最後に注文したのがエンピリカル・アユークです。エンピリカルと言うのは造語で、既存のどのアルコールにも分類されない新しい種類の酒のようです。デンマークはコペンハーゲンの有名レストラン「ノーマ」出身のラース・ウィリアムズ、マーク・エミル・ハーマンセン両名が創り出したスピリッツです。気になっていたのですが購入するのを躊躇っていたので、もしやと思いYさんに置いてあるか聞くと、三種類とも揃えていたのには脱帽しました。日本の麹を使い、最新の技術で製造しているけれども、原始的であるとYさんは評していました。飲むとピートのような香ばしさが有り、スコッチが近いと言えば近いのですが、どこか科学的なゴムのような味もしました。香りは独特で好き嫌いあると思いますが、肝心の旨味が不足していて私には美味いとは思えませんでした。世界の名だたるバーが絶賛との触れ込みであるこの商品。正直なところ、結構高い酒の割に中身はさほど・・・なので自分で買う前にお試しが出来て良かったです。

私の知人は「バーは時間を買う所である」と言っていました。確かに酒をただ飲むのであれば、家で飲むのが一番経済的です。バーは座っただけで席料が徴収され、一杯シングル(30ml)で飲むだけでも軽く1,000円は超えます。それでも、専門家の豊富な知識を分けて貰ったり、宝石の様に煌めく酒瓶を眺めて豊かな時間を過ごす対価としては、決して高いとは言えないでしょう。

A店から続けてB店へ移動。B店はひっきりなしに客が入れ替わる盛況ぶりでした。最初に旬のカクテルを頼むのは外せないので、まず一杯目はモヒートを注文。2006年マイケル・マン制作の映画マイアミバイスでコリン・ファレル演じるソニー・クロケットが「モヒート中毒だ」という台詞を口にしていますが、確かに何度も頼んでしまうほどこのカクテルは美味いです。ミントの葉や細かく砕かれた氷などによる見た目の涼しさ・美しさ、すっきり爽やかな味わいなど、一発で暑気を払ってくれる魔法のカクテルです。じめじめとして暑い梅雨の時期には欠かせません。

これまでテキーラはよく飲んできましたが、メスカルには手を出したことが無いので、ここで初めてメスカルをいただくことにしました。デル・マゲイのメスカルです。スペイン語でDel Magueyと書き、英語に直訳すればOf Matuey=竜舌蘭の、となるでしょうか。メスカルはテキーラと違い熟成させずに無色透明で作られることが多いようです。メキシコは地域によりますが、乾燥帯では湿度が極端に低くなります。即ち、揮発量=天使の分け前が多く、テキーラでもあまり長期熟成させることがありません。アネホで2年、エクストラアネホで3年程度でしょうか。例外もありますが。さて、デル・マゲイの感想ですがチーズに少し似た発酵臭が有り、ピートのような香ばしさもありました。素材や土地柄が出ているかもしれないと、店主のNさんは言っていました。味わい自体はテキーラに似ていると思います。竜舌蘭が主原料なのは共通しています。洗練された味わいではなく、テキーラよりも少し原始的で牧歌的な感じ、それ故に自然の力強さのようなものが伝わってきました。Yさんもメスカルを「根源的な味わい」と述べており、初めて飲んだ時は感動したというような話をしてくれました。かなり私好みの味わいで、もっと他の銘柄も飲んでみたいと欲求が湧いてきました。

続けてダルモア12年、カーデュ18年、ロイヤルロッホナガー・セレクテッドリザーブ(ハーフ)、を飲みました。ダルモアは初飲みです。これらについて率直な感想は「万人受けしそうな味だけれど、特筆することは無い及第点程度の品質」かと思います。舌が肥えて来るとどうしても辛口の評価になってしまいますが、わざわざ活字にするほどの言葉は浮かんできませんでした。

私は理屈や理論を重要視していますが、最終的には自分の五感と直感を信じており、自分の出した答えに間違いは無いと思っています。評論家や熱心なブログ運営者は人目に触れることを意識して、出来るだけ沢山の言葉や専門用語を並べていると思います。それを馬鹿にはしませんし、その人達には重要な事なのだと理解もしています。しかし私のような人間にとって、千の言葉を並べるよりただ一言、心の底から「美味い」と言えるかどうか、この一単語が素直に作為も無く出て来るかどうかが一番大事です。自信を持って言いますが、私が前向きな或いは美味いと評価した酒は、本当に美味いこと間違い無しです。

この後、他にめぼしいモルトが無さそうだったので、アブサンを頼むことにしました。「飲みやすい物を」とお願いしたのですが、癖を愉しむ酒なので飲みやすいという定義には当て嵌まらないと言われ、Nさんを少し困惑させてしまったかもしれません。少し前に飲んだマルス蒸留所のアブサンが不味かった、とは言えなかったので婉曲な言い回しにしたのですが・・・結局、勧めてくれたのがマリリン・マンソンが手掛けているマンシンスです。アブサンとマンソンを掛け合わせた命名なのでしょう。度数が66.6%という意図的な数字でした。アブサンを飲むのは三度目ですが、相変わらず口内の水分を即座に奪っていく強烈さです。今回のはまだ飲める味わいでしたが、歯磨き粉のような味も健在で、何度飲んでも美味さを期待するような分類ではないと確信しました。三度目の正直と言う事で、アブサンの採掘はもう今後する必要は無いと結論を出しました。

ところで、Absynthe Mindedと言う名のバンドがベルギーに存在します。ベルギーには個性的で実力の高いバンドが多いので、洋楽好きの人達にはベルギー音楽の探求をお勧めします。

最後に珍しくカクテルを注文、「ラムを使ったショートカクテルをお任せで」と頼んで出て来たのがネヴァダでした。ロングかショートどちらにするか聞かれた時、間違えて「ショット」と言ってしまったのが恥です。Nさんの好きなカクテルと言うことでしたが、私にはぼんやりとして好みに合わなかったかな・・・勉強用と言う事で、「ウィスキーの基本」なる本をお土産に持たせてくれました。Nさんの期待に応えられるよう、良く飲み良く学んで酒を楽しみたいと思います。今回の収穫はエイトランズとデル・マゲイです。これらを知れただけでも、散財をした価値があったと思います。

少し酩酊しながら家路につきましたが、流石にバー2軒は私の経済事情を考えると贅沢過ぎると反省し、次回からは交互に通おうと、急に現実的な事を思いました。基本的に大型連休の時期に通うことが多いのですが、今年の夏は死ぬほど暑くなりそうなので、早めに行くことにしました。次はもっと涼しくなってから訪ねようと思います。

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