初めに
2024/1/8開封、価格は3,700円。度数40.0度、容量700ml。産地はアイルランド、マッド・マーチ・ヘアのポティーンです。ポティーンはあらゆるスピリッツの中で最も古い伝統を誇り、ウイスキーを凌ぐ長い歴史があるとか。マッド・マーチ・ヘアは材料の殆どを蒸留所から半径5km以内の農家から集め、伝統製法に則り、小型の銅製単式蒸留釜で3回蒸留しています。

兎は三月になると繁殖期を迎え、気が違ったように見えるとか、浮かれるとかそんな話が。不思議の国のアリスで、そのような兎が登場した記憶があります。因みに英語で「hare」とは野兎の事を指します。日本では兎と言うと「rabbit」が浸透していますが、rabbitは家兎(飼育兎)になるので、使い分けが必要です。英語教育に力を入れる(入れる必要無いのに)とか言っている割に、間違った解釈で英単語が使われている事が多いです。仏教神の解釈もそうですが、何でも勝手な自己流が入るのは、どうにかならないものかと思います。
色・香り、味わい
色は無色透明。香りは発酵や酸味が感じられる、パンのような香り。口に含んだ瞬間はとても柔らかくて軽く、驚くほど滑らか。喉を落ちる瞬間に遅れてアルコールの強さを感じ、大麦由来と思われる良い香りが鼻腔を抜けます。別記事でありますがドッペルコルンやホーリールード・ニューメイク・クリスタルモルトとはまた違った味わい。何となく焼酎に似た印象があります。焼酎でも臭みのある芋焼酎が近いでしょうか。
余韻にぴりっとした香辛料のような刺激、少しばかりの苦みがあります。最初に感じる豊かな甘さは、次第に辛口へと変化していきます。ポティーンは原材料だけで考えるとウィスキーに近い酒ですが、ウィスキーらしさは希薄で、別の酒のようです。やはりウィスキーの原液であるニューメイクに近いものがあります。



ホーリールードはとても濃厚で独特の個性がある酒ですが、それと比較するとこちらはかなり大人しい印象。比率は不明ですが、大麦以外にじゃが芋や甜菜(砂糖大根)を使っているからかもしれません(瓶の表示にはモルト、グレーンとしか記載がありません)。多分、大麦のみで作った方がもっと美味しくなるかもしれませんが、このへんは事情があるのでしょう。過去において、イギリスによるアイルランド同化政策の一環で、ウィスキー製造者やモルトが課税され、アイルランド人達は重税に苦しんでいました。アイルランドのウィスキーはモルト以外の代替材料を使う事で、どんどん粗悪になっていったとか。スコッチの歴史と事情が似ていますね。
大麦以外の材料が上手く作用しているのか野性的で、良い意味で洗練されていない野暮ったい味がします。熟成が数週間なので荒々しく雑味が多いですが、自然の味わいが強いとも言えます。価格を考えると、大人しくウィスキーを買った方が良い気がしますが、試しに味わってみる価値はあるでしょう。半分程消費すると林檎のような果実感と、熟成したウィスキーのような香りが出て来た気がします。最後まで美味しく飲めました。
最後に
やや癖のある味わいだが、何だか気に入ってしまいました。注意深く味わえば、ウィスキーに進化しそうな可能性を秘めた、安酒とは言わせない品質があるのが分かります。これはこれで一つの完成形なのでしょう。美味しかったです。気が向けばまた飲みたいと思います。
記事公開2025年2月2日